研究課題/領域番号 |
26330321
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中西 のりこ 神戸学院大学, 経営学部, 准教授 (80512285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音象徴 / 共感覚 / 英語音声学 / オノマトペ / 言語普遍性 / 言語習慣 / SD法 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語音が特定のイメージと結びつくという「音象徴」という現象について、英語の音素が人に与える印象と、その印象に文化的普遍性と文化的特性があるかを検証するものである。平成26年度は、英語・中国語・日本語母語話者を対象としたwebアンケート調査システムを構築し、調査を以下の要領で実施した。 1. アンケート調査手法と調査項目の決定・翻訳:Osgood (1964)などによるSD法を参考に、調査項目となる形容詞対を絞った。アンケート調査協力者の負担を最小限に抑えるため、回答の方法や質問項目すべてを英語・中国語・日本語の3か国語で作成した。 2. 無意味語の作成・音声刺激の合成音作成:刺激語そのものの意味的イメージが音のイメージに影響を及ぼすことを避けるため、3か国語すべてにおいて無意味語となる刺激語を抽出した。音声刺激の発話者の声の特徴による影響を取り除くため、音声合成ソフトを用いて男性音・女性音2種類を組み合わせた音声刺激を作成した。 3. Webアンケートシステム構築・調査の実施:調査用HPを立ち上げ、2.で作成された22種類の音声刺激にともなうイメージと、1.で抽出された18対の形容詞との結びつきを調べる調査フォームを作成した。実施にあたり、中国語母語話者の反応を確認し調査協力を促すため、平成26年8月に3日間の現地調査を実施した。8月2日から24日の期間に寄せられた541回答のうち、英語母語話者135名・中国語母語話者91名・日本語母語話者96名からの回答を有効回答と見なし、分析対象とすることにした。 4. 3.で得られた結果をもとに、音象徴イメージをSD法を用いて測ることの妥当性の検証を行い「英語音素のイメージ比較―Semantic Differential 法による三次元アプローチ―」としてまとめた論文を学術誌に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では初年度を「調査実施のための準備期間」と見なしていたが、台湾での予備調査実施の可否を問い合わせる過程で、当初調査協力者数が懸念されていた中国語母語話者からまとまった数の調査協力が得られることが明らかとなったため、計画を前倒しし、平成26年夏にwebアンケート調査を実施した。 研究行程に余裕が生まれたことから、今後の分析から得られる知見を英語教育現場で活かす方法を探ることにした。具体的には、Project based learningやActive learningをキーワードとした学習法や、日本の学習者が英語音声に興味を持つ動機づけとして、音楽・コミュニケーション・資格対策の効用について模索した。
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今後の研究の推進方策 |
当初は平成27年度に計画していたwebアンケート調査実施がすでに完了したため、その調査結果の分析を進める。上記の322回答を対象に、言語音に対する音象徴イメージが、回答者の母語・性別・年齢などの属性によって異なるかどうかを分析し、有意差が見られた要素については、さらにその要因を探る。 当初は無意味語を対象とした調査から得られる知見のみが期待されていたが、可能であれば実在する英語のフレーズや文章を対象とした調査を実施し、最終年度である28年度に分析を開始することができるよう、楽曲の歌詞や英語絵本の本文データベースを構築する準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり当初の計画では初年度を「調査実施のための準備期間」と見なしていたが、台湾での予備調査実施の可否を問い合わせる過程で、当初調査協力者数が懸念されていた中国語母語話者からまとまった数の調査協力が得られることが明らかとなったため、調査協力依頼に要する費用が想定額よりも少ない額で賄われた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画していた調査結果の分析を進めると同時に、実在する英語のフレーズや文章へ調査対象を拡大する可能性を探る。可能であれば、最終年度である28年度に分析を開始することができるよう、楽曲の歌詞や英語絵本の本文データベースを構築する準備を進める。
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