研究課題/領域番号 |
26330369
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
谷口 祥一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50207180)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタデータ / RDA / FRBR / 概念モデル / BIBFRAME |
研究実績の概要 |
新たなメタデータ作成ガイドラインであるRDAのわが国での実装に向けて、(a)メタデータ作成者による理解を支援するためにRDAに即したモデルを効果的に提示すること、および(b)RDAに基づくメタデータ作成処理の支援システムを開発することを研究目的としている。今年度は主に以下の研究を遂行した。 1.BIBFRAME 2.0の検討:米国議会図書館が主導するBIBFRAMEプロジェクトにおいて提案された最新版のバージョン2.0について、RDFクラスとプロパティとして定義された語彙について検討を行った。BIBFRAMEは、現在、RDAを用いたメタデータ作成に際して利用しうる有力なスキーマとして提案されているため、RDAモデルとの相違の確認、RDAメタデータ作成用スキーマとしての適切性などを検討した。 加えて、RDAやBIBFRAMEを含めて、図書館目録全体のこれまでの経緯および現在の動向等について、図書の分担執筆および雑誌論文の執筆、学会の招待講演等を機会にして広範にまとめた。 2.優先実体の観点からのモデルの再検討:前年度に引き続き、RDAおよびそれが依拠するFRBR(書誌レコードの機能要件)モデルの実体構成を素材にして、優先する実体を変化させたときにどのような相違が生じるのかに基づき、特定の実体を優先することの直接的または間接的な帰結を検討した。 3.RDAメタデータの主題表現強化支援システムの検討:RDAメタデータの主題表現力を最終的に強化することを意図して、件名標目と分類記号の適切な対応づけ、および両者の統合的活用法の検討を行った。特に、細目付き件名標目に対応する分類記号を機械学習によって自動的に付与できるのかを実験により検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的(a)メタデータ作成者による理解を支援するためにRDAに即したモデルおよび適用事例等を効果的に提示すること、および(b)RDAに基づくメタデータ作成処理の支援システムを開発することに向けて、今年度は下記の成果を得ているが、全体として進捗がやや遅れていると判断した。 1.BIBFRAME 2.0の検討:BIBFRAMEの最新バージョン2.0について、主に(a)RDAメタデータの作成用スキーマとしての観点、および(b)RDAメタデータを超えて多様なメタデータの交換・共有用スキーマとしての観点の両方から、その適切性を検討し、問題点等を指摘した。成果は学会発表で公表したが、論文としての成果発表に着手できず、次年度に回すこととなった。 他方、RDAやBIBFRAMEを含めて、図書館目録全体のこれまでの経緯および現在の動向等について、図書の分担執筆および雑誌論文の執筆、学会の招待講演等を機会にして広範にまとめることを行った。これらにより、RDAそしてBIBFRAMEの位置づけがさらに明確にできたものと考える。 2.優先実体の観点からのモデルの再検討:RDAおよびそれが依拠するFRBRモデルの実体構成を素材にして、モデル内で特定の実体を優先することの直接的または間接的な帰結を明らかにし、成果を雑誌論文にまとめることを行った。ただし、未だ掲載には至っていない。 3.RDAメタデータの主題表現強化支援システムの検討:RDAにおいて十分にモデル化されていない主題表現にかかわる1つの試みとして、件名標目と分類記号の対応づけ(マッピング)の状況調査、および対応づけの自動化または作業支援の方策として、細目付き件名標目に対応する分類記号を機械学習によって自動的に付与できるのかを実験により検証した。その結果、現状では性能に限界があり、学習用データをさらに増強して実験する必要があることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
1.BIBFRAME 2.0の検討:BIBFRAME 2.0について、(a)RDAメタデータの作成用スキーマとしての観点から検討した成果、および(b)RDAメタデータを超えて多様なメタデータの交換・共有用スキーマとしての観点から検討した成果について、それぞれ雑誌論文として執筆し公表を進める。 2.優先実体の観点からのモデルの再検討:モデル内で特定の実体を優先することの直接的または間接的な帰結について、既に論文としてまとめ学術雑誌に投稿しており、今後は掲載に至るまでの必要な対処を行う。 3.RDAメタデータの主題表現強化支援システムの検討:これまでに行った実験の結果を踏まえ、機械学習に用いる学習用データの増強、すなわち人手による判定作業のさらなる追加等を行うとともに、それらデータを用いた検証実験を改めて実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果公表に伴う英語論文原稿の校閲を予定していたが、論文原稿執筆が時間的に間に合わなかったため、校閲にかかる経費分が残額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
成果公表に伴う英語論文原稿の校閲費、およびその他補助的な物品の購入等を予定している。
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