研究課題/領域番号 |
26340020
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 新一郎 東北大学, 加齢医学研究所, 講師 (10400417)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNA修復 / 酸化ストレス / アセチルトランスフェラーゼ |
研究実績の概要 |
ゲノムの安定性にかかわるDNA修復機構に関連した研究を行いDNA二重鎖切断のDNA修復機構に関連するタンパク質であるPNKPとAPTXのもつFHA domainの解析からNHEJに関わる新規DNA修復酵素PALFを発見した。PALFがPARP1と相互作用しPARP1を活性化すること、また、PALFのタンパク質配列のバイオインフォマティクス解析から新規CYR domainを発見した(EMBO J. 2007; 26, 2094-2103, J Biol Chem. 2011; 286: 36368 -77)。 また、CYR domainの機能を明らかにするためにショウジョウバエの未知タンパク質CG1218のCYR domainの構造を決定し、CYR domainがpoly ADP ribosyl鎖に結合することを明らかにした(Genes Cells. 2010 ; 15:101-10)。CYR domainを含むタンパク質がすべてDNA代謝関連タンパク質であることから、CG1218もDNA修復酵素であると予想しCG1218とそのヒトオスソログC4orf27を解析し、PALF (APLF)とよく似たAP endonuclease 活性、3’-exonuclease活性を持つことを明らかにした。現在、C4orf27をAPNXと命名し、その生理機能を解析している。 上記以外に、共同研究でゲノムの安定性にかかわるDNA修復関連タンパク質BRCA1の相互作用としてOLA1を見出しセントロソームの制御に関わることを明らかにした(Molecular Cell, 2014 53(1):101-14)。がん抑制遺伝子と考えられているクロマチンリモデリングファクターARID1aがNHEJのDNA修復に働いていることを明らかにした(Cancer Res. 2014 ;74(9):2465-75)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験計画としてあげた3つの計画について研究状況を説明する。 (1)APNXに部分変異を入れ活性部位および活性調節部位を明らかにするー APNXの変異体を作製し、活性ドメインの同定を行う予定で研究を進めたが、保存されたアミノ酸の点変異体を作製すると多くは可溶性が変化しリコンビナントタンパク質が回収できないことがわかった。現在His-tagからGST-tag, MBP-tag, などに変更しリコンビナントタンパク質を作成している。(2)APNXの新規アセチル化酵素としての基質を同定する ーTip60の安定発現細胞株を樹立し免疫沈降した結果、APNXがTip60の結合タンパク質であることが分った。In vitroでAPNXがTip60をアセチル化することからTip60がAPNXの基質であると考えられる。APNXのsiRNAでノックダウンでアセチル化が阻害されるタンパク質として、アセチル化酵素p300、とH2AZを想定しているがTip60と同様にp300を活性化する可能性があるためp300の安定発現細胞株を樹立して調べようとしている。(3)APNXによるTip60活性化メカニズムを明らかにするー酸化損傷で活性化されるTip60とAPNXの関係を明らかにするために新たにTip60のwild typeとmutant typeの安定発現細胞株を樹立した。この細胞をそれぞれノーマル培養した細胞とH2O2処理した細胞を使って免疫沈降し、抗APNX抗体でウエスタン解析をしたところ(I)APNXはTip60の結合タンパク質で、H2O2処理で活性化Tip60から離れること、(II)活性のない変異Tip60とは通常結合しないが、H2O2処理で変異Tip60に結合してくることが明らかになった。このIn vivoの結合パターンからAPNXがTip60の活性化因子であることが強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
APNXが405nmレーザーで核内に作ったDNA damage siteに集積すること、また、アセチル基転移酵素としてTip60をアセチル化し活性化することは、細胞内におけるリン酸化カスケードによるシグナル伝達と同様なメカニズム、アセチル化カスケードによるシグナル伝達が存在する可能性を示唆している。アセチル化カスケードの概念や研究は今までのところまったくないが、酸化ダメージ → APNXの活性化 → Tip60、p300等アセチル化酵素の活性化 → エフェクターの機能調節のシグナル伝達が証明されれば重要な発見となるので、今後はこのパスウエイの証明に重点をおいて研究する。 APNXの研究とはインディペンデントに行っていたRACK1(WD repeatタンパク質でシグナル分子のスキャフォルドタンパク質として機能することが知られている)のプロテオーム解析で酸化ストレスで特異的にRACK1にAPNXが結合することを発見したが、APNXがRACK1複合体をアセチル化し酸化ストレスでのmRNAのクオリティーコントロールに関与するかどうかを調べる目的で、酸化トレスでAPNXがRACK1複合体をアセチル化するかどうかを調べる。
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