視覚性認知障害や注意障害を併存するリスク児を早期に検出し、就学後に予測されるADHDや発達性読み書き障害へ移行するDCDの臨床像を容易かつ客観的に描出が可能なスクリーニング指標を得るためにDCD指標の検討と他の認知指標との関係を検討した。 目的:DCDの重症度尺度の検討と他の認知課題の基準値を作成すること、スクリーニングが特に有効な低学年にDCD課題を施行し、DCD児の中で他の認知課題にも困難を呈した児の検出確率を検討しDCD課題の有効性を検討することである。 方法:対象は都内小学校1年から6年519名および通級指導学級43名。課題はRCPM、グーパー交互運動(手本を示し1から10まで数えながら検査者のリズムを真似る試行と自分のやりやすいリズムにて試行)所要時間と拙劣さを評価、さらに決まったリズムと自由試行で左右手による母指対向(手本を提示し1から10まで声を出しながら交互に間違えないように)所要時間を計測、ビーズひも通し10個の所要時間測定、立方体透視図の模写、パタカ交互運動を5回繰り返すまでの所要時間および線画同定課題を施行した。また、eye trackingによる解析を行った。 結果および考察:DCD課題は単純な運動に限定した上肢道具なし課題にて相関が高く、発達期の発達性協調運動は、道具無しの協調運動がより相応しいことが示唆された。さらに、グーパー交互運動と母指対向は、上肢の両側を使用するか、片側を使用するかの相違があるものの、協調運動の観点からは両手使用による運動がよりスクリーニングの目的に沿った課題と考えられた。発達障害疑い児の中で、複数の発達障害を併存する児がDCDを呈する児の検出確率を算出したところ、平均で92.1%の検出確率を得た。協調運動課題が困難な児は、複数の発達障害を併存している可能が高く、発達障害を鑑別する上で重要な指標となることが分かった。
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