研究課題/領域番号 |
26350834
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
一宮 厚 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90176305)
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研究分担者 |
熊谷 秋三 九州大学, 基幹教育院, 教授 (80145193)
福盛 英明 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40304844)
松下 智子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40618071)
梶谷 康介 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (10597272)
眞崎 義憲 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (10437775)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大学生 / メンタルヘルス / セルフケア / 教育プログラム / 抑鬱状態 / 自殺願望 / 修学不適応 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
研究計画の3年目の平成28年度も、計画どおり1年生全員にメンタル調査と「セルフケア教育プログラム」を実施した。入学前のアンケート、入学時健診時の問診票による調査を行い、前期の健康・スポーツ科学演習において、既に作成している教材を用いて、心身の健康維持・増進、コミュニケーション力や学生の強みを開発する双方向型・実践型の授業を目指したプログラムを実施した。 プログラム実施の前後(入学後1ヶ月と前期授業の終わり)には、様々な調査を実施した。精神健康調査としてQOL調査(QOLS,WHO-QOL),うつ状態調査(CES-D),およびストレス対処能力(首尾一貫感覚;SOC13項目),睡眠調査(ピッツバーグ睡眠障害調査),対人コミュニケーション調査(独自に作成した大学生を対象とした対人コミュニケーション尺度)、そのほか生活習慣行動、食事調査であった。 セルフケアプログラムは、1年目に改訂し、今年度は2回目の実施であった。改訂のため評価は遅れることになった。 学生の調査については、2つの成果を報告した。大学の1年次での低単位と、高校時代までの健康などとの関連を検討した。合格に不満足であることは単位取得と関係が明らかで、それ以外では、発達障害に関連する項目が大きく関係していた。代表として、スケジュールの管理が不得意であることが第一に抽出された。高校時代に不規則な睡眠や食事も低単位に関係していた。高校時代までに長期の不登校は、大学においても初期適応に関係していた。 症状について、今年度は自殺願望に焦点を当てて検討した。自殺願望は、抑うつ症状とは無関係であり、親しい友人がいない者と親との関係が良好でない者はは自殺願望を持つ可能性が高いことが分かった。学生の対人能力が自殺願望を防止するうえで重要であり、大学でも人間関係作りをサポートする仕組みを提供することが重要なことであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学生のメンタルヘルス調査は順調に進み、継続的にデータを蓄積できている。 研究期間の開始から現在までに、大学での修学に影響する精神面を含む要因、また精神面の問題としては、睡眠、自殺願望に関して解析し、知見が得られた。 教育プログラムについては、プログラムへの興味に関わる要因について分析し、実施後の改訂も行ったが、介入の成果についての解析には至っていない。今後、行う予定である。ただ、今年度からクウォーター制が導入され、カリキュラムに大幅な変更が行われたので、プログラムに変更を加えざるを得なかった。このこともあって、成果の評価法を検討しなければならない状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
終了年度であったが、研究費に余裕が出来たので、研究期間の延長を申請し承認を受けた。 それにより平成29年度前期も前年同様に調査を実施し、研究期間より1年多いデータを得ることができ、より確かな解析が可能になる。 平成29年度から九州大学ではクォーターが導入された。新入生に対しする教育プログラムも変更を余儀なくされる。カリキュラムの変更による学生の不適応やそれによるメンタルへの影響が想定されるので、引き続き、今年度以降も、調査研究を継続する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理等の人件費を使わず、大学院生などでまかなった。学会参加費は校費など他の経費で支出できた。 以上のようなことから、経費に余裕ができた。 これをもとに研究期間を延長し、もう1年分、つまり全部で4年間、学生の調査、と授業の介入を継続して行うことにした。継続的な調査研究を目指しており。1年ではあるがより継続的な研究が可能になった。
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次年度使用額の使用計画 |
その他の使途として、平成29年度前期に実施する調査の人件費、データ入力の費用に充てる。
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