マレーシアは政府主導の開発戦略で経済発展を遂げたが、先進国入りを前に「中所得国の罠」、国内格差、社会保障問題など山積みの政治的課題に苦悶している。本研究では、1997/98年のアジア通貨危機以降、経済構造はどのように変化し、その中でどのような格差が顕著に現れてきたのか、いかなる産業が高付加価値化をめざし、中所得国から高所得国への移行を可能にするのか、天然ゴム産業に焦点をあて分析をした。その結果、国内格差、所得格差、エスニックの差異は、マレーシアの基本政策である新経済政策の矛盾の中で助長されてきたこと、他方で、資源利用型産業の高付加価値化の試み、産業の多様化が促進されていることが明らかになった。
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