研究課題/領域番号 |
26370024
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高橋 隆雄 熊本大学, 大学院先導機構, 特定事業教員 (00145278)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 防災 / 災害時の倫理 / 規則倫理 / 徳倫理 / 共災 |
研究実績の概要 |
4月に熊本地震があり秋には私の手術入院があった。また、海外調査研究を予定していたアジア地域の治安の悪化もあり、海外での調査研究を実施できなかった。しかし、実際に二度にわたる震度7という大きな地震を経験したことは、災害時の倫理の構築に大いに貢献したといえる。たとえば、7月に名古屋大学で開催された熊本地震に関するシンポジウムにはパネリストとして参加し、熊本地震経験者の視点から防災について自分の考えを述べた。3月に京都大学で開催された第3回地区防災計画学会大会では、研究発表とともにシンポジウムのパネリストとしても参加した。それらを通じて、災害時の倫理に関して理論的な深化を得ることができた。具体的には、第一には、平常時の倫理と災害時の倫理の関係について、これまでは社会契約論の思考枠組みで捉えていたが、それを平常時もある意味では災害時であるという「共災」概念で把握しなおすことができたことである。第二には、内閣府の主導で作られた地区防災計画にある住民等の自助と共助の責務という考えの中に、いわゆる徳倫理の思想が存在することの発見である。防災計画では種々の行動規則が規定されるが、それら規則倫理(行為倫理)とともに徳倫理が不可欠であるということは、倫理学上の議論での規則倫理と徳倫理の関係の再考につながるのはないかと思われる。さらに、京都大学でのシンポジウムでの発表のために、熊本地震への地元の自治会での対応状況を調査したが、それにより、地域住民の防災意識の実態と課題という実践的にも重要な成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4月に熊本地震があり秋には私の手術入院があった。また、海外調査研究を予定していたアジア地域の治安の悪化もあり、海外での調査研究を実施できなかった。このような理由から、研究期間を延長せざるを得なかった。そのような意味で、本研究課題の進捗状況としてはやや遅れているといわざるを得ない。ただし、実際に二度にわたる震度7という大きな地震を経験したことは、災害時の倫理の構築に大きく貢献しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、最終年度に「災害と倫理の視点からの新しい倫理的枠組みの構築をめざす」とあるが、平成29年度はこの計画を推進していく。前年度に、災害時の倫理と平常時の倫理の関係が相当明確になったので、それをさらに深化させることをめざす。なお、当初の計画にあったバングラデシュへお調査研究は当地での治安の悪化により実現は困難と考えられる。研究成果について述べると、本年度中に英文で2本の論文が刊行予定である 平常時の倫理と災害時に倫理については、日本語でも論文を刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震及び手術による入院、ならびに治安悪化による海外調査研究の断念等により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の最終年度として、目的遂行のために適切に使用する。
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