研究課題/領域番号 |
26370035
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
上原 雅文 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30330723)
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研究分担者 |
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 教授 (00263624)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
栗原 剛 山口大学, 人文学部, 准教授 (50422358)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 仏法 / 神 / 神仏共存 / 愚管抄 / 慈円 / 現存 / 比叡山 |
研究実績の概要 |
『愚管抄』文献読解に関しては、岩波古典文学大系の本文、頭注、および大隅和雄の訳(講談社学術文庫版)について、上原と柏木が部分的に細かいチェックを行い、ルビ、段落、句読点、訳、頭注などの問題点を洗い出した。それを踏まえて、全員で分担し、正確な訳を作成中である。現地調査は、8月末に、慈円の活動拠点であり墓もある善峰寺(京都市西京区)を調査した。また慈円の修行地である江文寺跡(京都市左京区)も調査した。また、慈円が晩年に住み、一時期、大懺法院を移転した東山の安養寺(吉水坊跡、京都市東山区)を調査した。研究会は2回行った。8月は、京都宿泊施設において、『愚管抄』(岩波古典文学大系)本文、及び頭注と大隅訳の問題点について議論し、訳出作業の手順を決めた。3月の神奈川大学での研究会においては、連携研究者佐藤正英の『日本の思想とは何か』(筑摩書房)、及び執筆中の『倫理学概論』をもとに、神・仏それぞれの原理と人間の「現存」について議論を行った。 個別研究は、以下の通りである。研究代表者・上原は、『愚管抄』の本文、頭注、訳の検討を行うとともに、訳出作業を進めた。また天台教学における神仏関係の歴史を再検討した。研究分担者・柏木は、上原とともに『愚管抄』本文、頭注、訳の検討を行う一方、仏観念に関する研究を継続し、日本における仏観念の特質解明の準備として、先行仏伝テクストの載録挿話を整理した。研究分担者・吉田は、中近世の説話・物語文献と『愚管抄』とにおける「現存」構造の比較の土台を構築するため、謡曲・説経節・武士道書における「現存」の検討を行い、成果の一部を公刊した。研究分担者・栗原は、『愚管抄』の分担箇所に対する読解と並行して、近世以降の日本思想における人間の「現存」、とくに武士の自意識と、それを根拠づけた儒教的「天」観念をめぐる考察を行った。連携研究者・佐藤は、『倫理学概論』を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年2回の研究会と現地調査はほぼ計画通りに実施することが出来た。しかし、『愚管抄』の写本蒐集および読解・現代語訳作業は、やや遅れている。理由の1つは、連絡研究者佐藤正英の著作についての議論に時間が取られていることが挙げられる。しかし、佐藤が執筆中の『倫理学概論』をもとにして、神と仏法それぞれの原理とその共存について、および人間の「現存」の構造についての議論を重ねており、その議論は当初の研究目的にかなった内容である。それぞれの分担者の個別研究は、各時代の人間の「現存」解明の一翼を担っており、今後の『愚管抄』研究に集約できる内容となっている。現在、『愚管抄』訳出の分担作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
予定より遅れ気味である『愚管抄』の写本蒐集・校合および読解・現代語訳作業を優先的に進める。研究会は、当初年1回の計画であったが、年2回開催することとし、研究成果の集約のための議論、および公開に向けての作業を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の共同作業によって、『愚管抄』の諸写本の校合および岩波思想体系本の頭注・大隅訳の再検討を行い、新たに現代語訳を作成するためには、当初の計画であった1回の研究会では不足であり、研究会を2回開催する必要があると考えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、研究会(2回目も神奈川大学)のための旅費に使用する。また必要な書籍・資料も適宜購入する。
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