研究課題/領域番号 |
26370091
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮原 克人 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80400662)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 工芸 / 農閑工芸 / 植物素材 / 美術教育 |
研究実績の概要 |
草木を扱い、わずかな道具で建物や容器、そして衣服などを作る軟質文化の事例収集・分析から「農閑工芸」の検証を行い、実践的な「農関工芸」の造形論を構築する。「農閑工芸」はワラ細工に代表されるが、地域の自然・植生との関わりが深い軟質文化の事例を調査対象とした。そのため、日本において稲作以前より現代に続く事例を取りあげた。東北を中心とした樹皮の造形と八重山地方を中心とした草や葉の造形を選び、比較検討しながら軟質文化の造形を調査した。 東北地方では昨年度に続き、秋田市にて調査とワークショップを実施した。6月末に山に生えているヤマザクラ、ヤマブドウ、サワグルミの樹皮採集を行った。また、サワグルミの木を利用して樹皮抜き取り方法の実験を行った。さらに、ヤマザクラ、サワグルミ、サルナシ、ヤマブドウの樹皮を使用して実験制作ワークショップを実施した。 八重山地方では、昨年に続きクバの造形について調査を行った。また、月桃の採集から造形の素材化までの工程を調査するとともに実験制作ワークショップを実施した。 筑波大学の周辺は「ほうき作り」が盛んに行われていた。現在はほうき作りの素材となる「ホウキモロコシ」を育てる農家は少なく、ほうき作りに関わる技術者も減少の一途をたどっている。ほうき作りのワークショップを行い、農閑工芸を一般化する際に必要と考える「作る喜び」が体得できる教材としての「ほうき作り」の可能性を検討した。また、植物素材を造形の素材として、自然の形や成長の軌跡を作品化する試みを行った。その結果である作品「Life Record」を「会津・漆の芸術祭2015」において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、①「軟質文化」による造形の事例収集②「軟質文化」の事例収集に伴う分析③ワークショップ、実験制作④展覧会の開催、を実施することができた。それに加え、「ほうき作り」では本研究を造形教育に応用することも検討できたため。
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今後の研究の推進方策 |
軟質文化の造形について、平成28年度以降も八重山地方と東北地方を調査対象地とする。調査の対象地は同様であるが、季節によって採集可能な素材が変わるため、平成27年度とは異なる調査時期を選び、これまで調査していなかった事例について調査する。 これまでの研究成果から、地域と農閑工芸の関係を明らかにすることが、本研究を進める上で有効である事が分かった。そのため上記対象地に加えて、筑波大学周辺での農閑工芸の事例であるほうき作りについて、「地域と農閑工芸の関係」をいう観点から調査しつつ、教育へ応用するためのテキスト作りを行う。
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