研究課題/領域番号 |
26370146
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
影山 悦子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (20453144)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中央アジア / 錦 / 文様 |
研究実績の概要 |
2年目である平成27年度は、初年度の研究成果を和文と英文で論文にまとめ、公表した。 新たに、東大寺正倉院宝物の一つである幡に注目し研究を行った。当該幡に使用された織物は唐で製作された縦錦で、翼を広げた鳥を正面(腹側)から見た姿を連珠円文の中に表現している。鳥の腹の部分には円形の模様がいくつか見えるが、何を表しているのか、この断片では判別できない。しかし、中国青海省都蘭で発見された同様の文様の錦では、この部分に正面から見た人の全身像がかろうじて認められる。したがって、正倉院の当該幡の錦も、鳥の腹部の円形の模様は、人間の姿を表した図像が崩れた結果であると推測される。女性をさらって飛び立つ巨大な鳥を正面(腹側)から表す文様は、ササン朝ペルシアの銀器の文様にも使用されている。また同様の図像(さらわれるのは男性の場合も)は、ガンダーラの菩薩像の頭部飾りや、新疆ウイグル自治区のキジル石窟の天井画など仏教美術の中にも認められる。西北インドからイラン、中央アジアまで、この図像が受容されていたことが確認されていたが、今回、それが中国、日本にまで伝わっていたことが判明した。学会で口頭発表を行い、この研究内容について報告した。 これと並行して、伎楽面に関する研究論文の収集を行った。美術史研究だけでなく、材料や技法に関する論文も収集した。 さらに、連携研究者とともにウズベキスタンのタシケントとサマルカンドを訪れ、法隆寺・正倉院宝物と同時代の遺物の実物調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
佩刀方法の変化に関する研究成果を和文と英文で発表し、国内外の研究者に発信することができた。また、新たに研究対象としている「女性をさらう鳥」の文様について、研究発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成28年度は、まず昨年度の研究成果を論文として公表する。 パリのギメ美術館、ルーブル美術館を訪れ、イスラム以前の中央アジア、イランの遺物を調査する。またパリでイスラム以前の中央アジアの美術・考古・歴史を研究している専門家と面談し、これまでの当該研究の成果を報告し、意見交換を行う。同時にヨーロッパで発表されている論文・著書などを入手する。 酔胡王の伎楽面について、これまでに収集した資料をもとに研究を行う。最近では海外に流出した伎楽面についても、調査研究が進められている。これらの新資料も合わせて検討し、研究成果を学会等で口頭発表する。 研究の過程で、言語学、保存科学の分野にかかわる問題については、連携研究者に助言を求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたが、書籍購入時に生じた端数であり、研究計画は当初の予定通り進行している。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入費として使用する。
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