平成28年度は、これまでの地方青年結社の「文」に関する資料所在調査と資料収集をふまえ、成果の発表を行った。また、収集した資料から論文・翻刻等を今後も継続して発表できるよう、追加・補足的な調査と資料の整理を行った。 地方文学結社の活動実態の研究としては、会津の「文学攻究会」資料のうち『愛菫遺稿』下冊の翻刻を行い、解題を付して「明治期地方文学資料の翻刻と解題(二)――福島県喜多方市「文学攻究会」資料・『愛菫遺稿』下――」(『大妻女子大学紀要―文系―』第49号、平成29年3月)として発表した。また、翻刻の作成に当たって、福島県立図書館での調査を二回行った。 青年の交際に必要な基本的リテラシーである書簡文についての成果をまとめた。1890年代の青年層による文語体書簡文の実態について調査研究をすすめ、その成果を、国木田独歩の小説「おとづれ」を題材にして考察した論文「「青年」の連帯の失効―国木田独歩「おとづれ」と「青年」の手紙―」(『大妻国文』第48号、平成29年3月)として発表した。 地方青年関係資料の追加・補足的な調査としては、(1)八戸市立図書館所蔵八戸青年会関係資料の調査、(2)『会津日報』掲載記事の調査、(3)「文学攻究会」同人が購読を計画していた『青年界』の入手および調査、(4)地方青年雑誌および回覧誌の収集(『川鹿』、『ワカバ』、『道光』、『文壇』、『頽壟』、『天使』、『緋桜』)を行った。 地方青年関係資料の整理としては、小木曽旭晃『地方文芸史』掲載の雑誌・結社・文学者のデータベース情報の追加を行った。方言矯正については、会津「文学攻究会」資料の翻刻過程で多くの事例を見出すことができ、言文一致と地方青年の「文」との関係について考察できるデータを得ることができた。また、「文学攻究会」の指導的な立場だった菊池研介が同時期に収集した書籍の情報を整理した。
|