研究課題/領域番号 |
26370269
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | George Peele / The Arraignment of Paris / 少年劇団 / 宮廷上演 / George Gascoigne / ケニルワース・エンターテインメント / Elizabeth I / パストラル |
研究実績の概要 |
平成27年度は、英国初期近代政治・宗教関係研究書、およびGeorge Peeleを中心としたエリザベス朝の劇作品・散文資料を収集し、あわせて初期の少年劇団の活動状況を調査する際重要と考えられる、George Peeleの唯一の宮廷上演劇であるThe Arraignment of Paris(1581)を分析し、学会発表を1件行った。また、この分析への補助線として有効と考えられる、George Gascoigneを中心としてプロデュースされた1575年のケニルワース・エンターテインメントについて、研究論文を1件執筆した。それ以外に、学術図書(共著)1件と書評1件を執筆し、学会発表をもう1件行った。 PeeleのThe Arraignment of Parisに関する学会発表では、Peeleの少年劇団との協働が、Peeleの最初期の演劇活動において重要な事項であったことを確認した上で、ケニルワース・エンターテインメント由来の要素である(1)主席観客としてのElizabeth Iの虚構世界への取り込み、(2)「ザベタ」という人物への仮託に典型的に窺われる女王へのオマージュ、が本劇において利用されている点を指摘した。さらに、少年劇団からのチャンネルとして、インタールード以来のイングランド演劇に連なる討論劇 (debat) の伝統が活用されている点も指摘し、Peeleという劇作家へ流入する多系統の演劇的伝統を押さえた上で、少年劇団による宮廷上演劇との関連の重要性について分析した。 ケニルワース・エンターテインメントに関する研究論文では、宮廷政治文化と演劇の商業化の接点に位置していたGascoigneの1575年前後の活動を調査し、本エンターテインメントが商業演劇の興隆に重要なインパクトを有していた可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、エリザベス朝期における宮廷政治文化と演劇興行との接続・相互作用を調査することであり、取り分け少年劇団が演劇の起業に与えた影響に注目するものである。平成27年度の目的は、Peeleが、いかに宮廷政治文化から民衆演劇興行へと移行していったかを検証することであった。この件に関し、学会発表と論文執筆をそれぞれ1件ずつ行うことができた。よって「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、エリザベス朝期における宮廷政治文化と演劇興行との接続・相互作用を調査することであり、取り分け少年劇団が演劇の起業に与えた影響に注目するものである。平成28年度の目的は、平成26年度・27年度の研究で明らかになった問題点を踏まえながら、John Lylyが、政治色を帯びた宮廷文化をいかに演劇化したかに関する検証を行い、学会発表と論文執筆を行うことである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度では、夏期に体調を崩したため、予定していた海外出張が不可能になり、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では、前年度で繰り越した経費も活用しながら、研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆および学会発表はもとより、これらの活動に加えてロンドン等海外での現地調査を計画している。
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