本研究は、アイルランドにおけるジェイムズ・ジョイスの受容とそれにまつわるアイルランドの文学の変容を考察することを目的とした。ジョイスはモダニズムの大変革者として評価されていたが、アイルランドでは異端者として無視される傾向にあった。その流れを覆したのが1993年のEU加盟であり、アイルランドもヨーロッパの趨勢を無視しえなくなってきた。アイルランドがジョイス化したと思われる。その一方、アイルランドは国家としてのアイデンティティを死守する都合もあった。こうしたバランスによって立ち、ジョイスの受容が進行し、同時にアイルランドの文学観も変貌していった。本研究はその流れを検証した。
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