研究課題/領域番号 |
26370383
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
天野 惠 京都大学, 文学研究科, 教授 (90175927)
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研究分担者 |
村瀬 有司 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10324873)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イタリア語 / イタリア文学 / イタリア・ルネサンス / ピエトロ・ベンボ / 言語問題 / 対抗宗教改革 / アリオスト / タッソ |
研究実績の概要 |
最終年度であることから、研究代表者はベンボ『俗語論』のテキストに関する具体的な調査を、また研究分担者はタッソの創作理論の分析を終了し、そこで明らかとなった《規範》や創作理論と実作品との関係を当時の文化的・社会的環境の中に位置づける予定であった。しかし、『俗語論』第三巻の調査を進めるに従って、ペトラルカ、ボッカッチョ等からの引用に含まれるテキスト上の問題が予想以上に大きく全般的に進捗が遅れる一方、イタリア本国で重要資料の発見があり新たな角度から目標に大きく迫る可能性が開けた。そこで、当初の計画を一部変更するとともに、本研究の研究分担者を代表者とする新研究計画を29年度より立ち上げ、これまでの成果をこの新計画に結び付けることにした。 イタリアで発見された重要資料とは、ベンボ『俗語論』の決定版たる第三版刊行のために著者自身が加筆・訂正を施した初版本の一冊である。存在は以前から推定されていたが、ペルージャ大学のカルロ・プルゾーニ教授らによってその実物が発見・特定された。この発見により、これまで推定に頼る他なかった第三版テキスト成立のプロセスをダイレクトに調査する道が開けたわけで、言うまでもなく本研究計画に及ぼす影響は絶大である。 件の加筆・訂正部分は目下そのエディションの刊行準備が進められているが、我々はこの新資料の発見者を日本に招いて最新情報の獲得に努めるとともに、本計画に則って作成中の『俗語論』第三巻の日本語訳に付した註については、これを全面的に見直す必要が生じたことから、こうした作業への助言を求めることにしている。新資料を精査すれば、ベンボの没後に出版された第三版に初めて現れるいくつかの重要な叙述が本当に著者自身の指示に基くものかどうかを判定できると同時に、推敲の跡を逐一追うことができるため、草稿から第三版に至る変遷の様態の全貌をこれまでにない精度で記述することが可能になる。
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