オッターヴァ・リーマによる16世紀のイタリア騎士物語詩は、ルネサンス期から対抗宗教改革期へと移り変わる政治的・文化的状況の変化を背景に、そのテーマと表現方法を大きく変えていくのであるが、言語に関しては14世紀の古典的トスカーナ語への回帰を基本理念とする《ベンボ規範》に忠実であり続けた。 本研究においては、アリオスト作品に大きな影響を及ぼしたベンボ『俗語論』の成立過程を、その手稿まで遡りつつ克明に跡付け、第三巻の精密な解釈を翻訳に定着させるとともに、世紀の後半に入って著しい発展を見せる叙事詩をめぐる文学理論と実作品の関連をタッソの作品において検証した。
|