研究課題/領域番号 |
26370519
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
中谷 健太郎 甲南大学, 文学部, 教授 (80388751)
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研究分担者 |
広瀬 友紀 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50322095)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心理言語学 / 文理解 / 文法依存関係処理 / 日本語 / 否定対極表現 / 国際研究者交流・アメリカ / トルコ語 |
研究実績の概要 |
本研究は,母語話者が文における語と語の文法依存関係をリアルタイムで理解する際に,どのように記憶資源を利用するかを解明するのが目標であるが,本年度は日本語とトルコ語に焦点を当てて研究が行われた。日本語においては,授与構文におけるゼロ代名詞解釈の実験やガ・ノ交替における読み時間研究などを行い,トルコ語においては否定対極表現の理解についての研究が行われた。実験手法は質問紙調査や自己ペース読文タスクが採用されたが,今回は特に作業記憶の個人差をオペレーション・スパン・タスクによって計測し,作業記憶容量の個人差がどのように読み時間と相関するかを調査した。その結果,特にトルコ語では,作業記憶容量が大きいほど,否定対極表現の主効果がみられるという結果が得られた。これは記憶容量の大きい者ほど複雑な文法関係の処理を正確に行おうとすることを示唆しているように思われるが,さらなる追試が必要である。日本語の関係節におけるガ・ノ交替においては,ノの場合においてのみ距離の効果(ノと述語距離が長いほど読み時間に遅延が生じたり,容認度が落ちる)が見られ,ガとノの統語構造が異なるという仮説を支持する結果となった。 今年度はSummer Statistics Seminar (SSS) 2014: New methods in psycholinguistic research(東京大学駒場キャンパス8/11),思考と言語研究会(TL)/Mental Architecture for Processing and Learning of Language 2014(東京大学駒場キャンパス8/12-13)という2つのワークショップを共催し,海外からの2名の招待講演者をはじめ、国内外から多くの参加を得、成果発表および情報交換の機会を多くの研究者に提供することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで先行研究ではなされなかったトルコ語の否定対極表現と距離効果についての実時間理解の実験を行うことができ,その発表の機会を持てた点では大きな進展があったと言える。ただし,仮説の予測や日本語の先行研究の報告に反し,否定対極表現が読み時間を遅延させるという方向で結果が出た。否定対極表現の頻度の低さがノイズになっている可能性があり,さらなる検証が必要である。日本語についてもトルコ語と合わせる形で再試が行われたが,分析がまだ未完である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には研究代表者がカリフォルニア大学サン・ディエゴ校(UCSD)へ在外研究へ赴く。UCSDでは計算機心理言語学ラボに合流し,文理解におけるワーキングメモリーの役割を期待の蓋然性理論および局所性効果の観点などから検証し,新しい実験パラダイムや手法,および統計分析の方法を開発することを目標とする。当該ラボはまた,語用論と文理解がどのように相互に作用しているかを研究しており(実験語用論),その知見を得ると同時に,本研究課題への応用を試みる。特に,文法依存関係の処理をする際に,大小の語用論的コンテキストが大きな影響を与えている可能性があり,これを検討することにより問題を切り分ける必要がある。 研究分担者は日本にとどまり,平成26年度の実験のフォローアップをすると同時に,トルコ語実験協力者を研究員として雇用し,引き続きトルコ語の実時間理解についての研究を執り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度中に発表する予定であった成果発表の一部を翌年に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年中に速やかに発表の機会を得るべく現在投稿準備をしており、昨年度持ち越し額はその準備および旅費に充当する。
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