本研究は,母語話者が文における語と語の文法依存関係をリアルタイムで理解する際に,どのように記憶資源を利用するかを特にSOV言語に焦点をあてて解明することを目標とした。日本語については授与構文におけるゼロ代名詞解釈の実験やガ・ノ交替における読み時間研究,様態副詞に取り立ての助詞「ハ」が付いた擬似否定対極表現や「も」を伴う否定対極遊離量化詞(「一件も」)の処理が検証され,トルコ語については否定対極表現の理解について検証された。高レベル文法処理における記憶資源の利用の解明に一定の成果があがったが,これは記憶容量の大きい被験者や理解度の高い被験者により強く見られる傾向があることがわかった。
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