研究課題/領域番号 |
26370587
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
俵山 雄司 群馬大学, 国際教育・研究センター, 講師 (30466685)
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研究分担者 |
田中 真寿美 青森中央学院大学, 経営法学部, 講師 (90557795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域日本語教育 / 日本語ボランティア |
研究実績の概要 |
本年度は、「日本語ボランティア養成講座」の実態について、養成講座の実態調査が初めて行われた2007年度の調査以後の変化に焦点を当て、検証した。 具体的には、①「養成・研修講座」を扱った論文(2008~2014年の全体としての傾向)②文化庁「生活者としての外国人」のための日本語教育事業の報告(H20(2008)年度とH25(2014)年度の比較)の2種のデータを収集・整理し、日本語教育学会(2008)で挙げられた「日本語ボランティア養成・研修講座に盛り込む学習内容と学習活動」との対応を検証する形で分析を行った。 ①では、2008年以降のボランティア養成・研修講座の内容について扱っていた文献11件を分析した結果、日本語教育学会(2008)で指摘された「双方向の学び」については、重要性の認識に比べ実現度は低いことがわかった。また、学習者のニーズが多様でも多様性に合わせて教室やボランティアが教え方や志向を変えるのは困難であるという現実を、養成・研修講座も反映し、学び合い型か教え込み型かという二者択一になっている点が明らかになった。 ②では、2008年度と20014年度の全ての養成講座の項目を分類し、その数を比較した。その結果、「日本語の教え方に関すること」は両者で1位という共通点も見られた一方で、いくつかの変化も観察された。具体的には、「日本語に関すること」(4位→10位)「言語学習に関する理論など」(8位→19位)といった知識伝授型の内容が減少し、「教科書・教材分析」(16位→13位)「ニーズの多様性への対応」(14位→12位)「日本語教育プログラムの作成」(25位→6位)「教材作成」(19位→7位)など、受講者が主体的に取り組む内容が増加していた。また、「やさしい日本語、外国人とのコミュニケーションのコツ」(12位→2位)が重視されるようになったこともわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた文献やwebページのデータを対象とした「日本語ボランティア養成講座」の実態調査を終え、その成果の一部を研究会で発表することができた。また、本研究の過程で行う「日本語ボランティア養成講座」の実施可能性を探るため、各地域の日本語学習支援を行っている団体の代表者や関係者に連絡を取り、情報交換を行った。具体的には、群馬県では俵山(研究代表者)と渡部(研究協力者)が2団体(桐生市・伊勢崎市)、青森県では田中(研究分担者)が4団体(青森市・弘前市)について、対面の形で現在の活動形態や「日本語ボランティア養成講座」のニーズの有無などについて確認を行っている。研究代表者が平成27年度から他大学に異動したこともあり、まだ講座の実施先や内容は確定していないが、ほぼ当初の予定通りに進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は初年度の結果を踏まえ、群馬県・青森県でそれぞれの団体の活動やニーズを踏まえた「日本語ボランティア養成講座」の実施に向けて、関係者と協議を始める。ただし、研究代表者が群馬県から離れてしまったため、居住地である愛知県での実施の可能性も同時に探っていく。 講座の終了後は、各ボランティア教室に入った(あるいは戻った)日本語ボランティアに対し、インタビューと活動観察を通して、講座の内容をどのように捉え、どのように活動に取り入れていったか(あるいは取り入れなかったか)の調査を開始する。 なお、講座の実施前には、横浜市など幾つかの先進的な試みを行っている日本語支援団体を訪問し、活動形態と養成講座の関係についてヒアリング調査を行い、講座の内容策定の参考にする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、日本語学習支援団体の訪問を行うための交通費がかなりかかると予想していた。しかし、地域の日本語ボランティアに関係する研修や講演会に赴いた際に、支援団体の代表者や関係者と情報交換する機会を持つことができ、交通費を節減することができた。また、日本語学習支援団体の訪問についても、訪問先を比較的近場の団体としたことで、同じく交通費の支出を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、上記で節減できた分について、先進事例を行っている団体の訪問・見学や新たな実施先の打診・開拓(愛知県で実施の場合)の際の交通費に充てるつもりである。
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