研究課題/領域番号 |
26370797
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
折田 悦郎 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (10177305)
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研究分担者 |
藤岡 健太郎 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00423575)
新谷 恭明 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (10154402)
井上 美香子 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30567326)
篠原 新 岐阜大学, その他部局等, 准教授 (80608927)
官田 光史 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (30768619)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 九州大学 / 大学紛争 / 戦後学生運動 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究目的は、九州大学大学文書館を中心に資料の収集・整理、データ作成等に力点を置いた活動をすることにあった。その成果の一部を第2年度報告書『「九大紛争」資料集―年表・米国国立公文書館所蔵資料等―』(全114頁)にまとめたが、特に海外資料については、詳細な調査を行うことにし、米国国立公文書館の所蔵する、1968年6月2日の九州大学(以下、九大)構内への「米軍機墜落事故」に関する文書(Record Group 59 Entry (A1) 1613 Genera l Records of the Department of State. Subject-Numeric Central PolicyFiles, 1967-1969, Boxes 1562-1563, Files "DEF 15 Japan-US", "DEF 17 Japan-US")のうち、特に「大学」と「地域」にとって重要と思われる16通を選んで、訳出した。同報告書には「九州大学学生運動関係年表―新聞記事・大学刊行物を中心に―」も所収したが、これは一般紙や「九州大学新聞」、九大の『年史』等から、学生運動関係の事項を選んで作成したものである。それから、同じく報告書に所収した「基地と大学―九州大学はうったえる―」は、1968年11月、九大の板付基地撤去促進専門委員会が「あいつぐ米軍機事故の発生に際会して学内の意見も徴して取りまとめ,とり急ぎ国内各層に訴えるため」に作成したものであり、そのタイトルに象徴的に示されているように、米軍基地を抱えた「大学(地域)」と「基地」の諸問題を考えるときの基礎資料だと思われるので、原文のまま復刻することにした。その他の報告等では、折田が「大学史における記録資料研究の重要性と今後の可能性」(科研シンポジウム兼博物館セミナー、2016.3.28、於九大) 、「「戦後70年」と大学史資料―九州帝国大学の学徒出陣―」(全国大学史資料協議会2015年度全国研究会、2015.10.8.於東北学院大学)で大学アーカイヴズの重要性とともに、「地域」と「大学」、「学生運動」にも関説した報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では昭和20年代~30年代の九大の学生運動についても調査を行うことになっていたが、やはり資料の豊富な九大「紛争」期についての収集・調査が主になった。その状況は上記「研究実績の概要」に記したような進捗状況であり、「紛争」期については相応の成果を出せたものと考えている。しかし、それより前の時代については、「地域」から九大の学生運動を見通すという視点に立った資料収集・整理は、計画ほどには進まなかった。この点が「やや遅れている」とした理由である。ただ、第2年度に収集を予定していた米国国立公文書館蔵の、特に1968年の九大構内への「米軍機墜落事件」については、改めて現地での資料収集を行い、その基本資料については訳出することができた。これらの基本資料をもとにして、今後は研究計画を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第2年度の進捗状況は上記「現在までの達成度(理由)」のようなものであるが、このほか第2年度は、九大と「地域」、あるいは九大学生運動史の基本となるような資料の寄贈があった。 一つは、学生運動の拠点となった教養部の教授、「紛争」期の学生部長を務めた奥田八二名誉教授(元福岡県知事)の、長年にわたる詳細な『日記』を始めとする個人文書資料(段ボール箱約150箱)である。奥田自身が学生運動に大きな影響を与えた「社会主義教会」(九大教授向坂逸郎主宰)の幹部であり、寄贈資料には同協会関係の古い証言テープなどもあって、大変貴重である。本年3月には奥田資料のうち特に重要な「日記」を読むための研究会(「奥田八二日記研究会」)を学内外の関係者13名により立ち上げ、事務局を九大大学文書館内に設置、2ヶ月に一回のペースで研究会を開催することにした。同時に奥田教授の活動を知るため、関係者へのインタビューも開始し、そのテープ起こしも行っている。 もう一つは、九州帝大医学部時代に始まった学生団体「九大セツルメント」関係資料(段ボール20箱)である。戦後再開され大学「紛争」期まで続いたこの団体の資料は、九大(「大学」)と「地域」の関係を具体的に知りうる好個の資料である。 共同研究最終年度(第3年度)は、上記2資料群の調査・分析と同時に、5月には「地域ベ平連研究会」と共催で、「第5回地域ベ平連研究会/「地域社会と戦後学生運動―九州大学を中心に―」研究会」を九大箱崎キャンパスで開催する予定である。
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