研究課題/領域番号 |
26370935
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
影山 穂波 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00302993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジェンダー / 居住空間 / ハワイ / 権力 / 戦争花嫁 |
研究実績の概要 |
平成26年8月にポーランドのワルシャワで開催された、IGU(International Geographical Union)のジェンダー部会プレ会議で、戦争花嫁に関する記事を分析し、発表した。この発表では、1950~60年代を中心として、メディアにおいて「戦争花嫁」がどのように表象されていたのかを検討した。すでに「戦争花嫁」に関するメディア分析は既存文献があるが、改めて原本を検討することで、彼女たちに対するまなざしの変化を明らかにすることができた。発表を通して、他の研究者から今後の示唆を得ることもできた。クラコフで行われた本大会にも参加し、多様な発表を聞くことができた。 IGUから帰国後、8月末から9月にかけて、ホノルルにおける日本人の調査を実施した。26年度はとくに、戦後、日本に駐留していたGIと結婚してハワイに渡航したいわゆる「戦争花嫁」に注目して研究を進めた。 雑誌による分析からは、1950年ごろを境に、GIと結婚した女性たちに対するまなざしが、憧れに近いものから侮蔑的な側面を強くしていったことがわかる。有名人女優の結婚の失敗が揶揄的に語られるようになり、GIのパートナーがそのまま売春をしている女性のような描かれ方も急増する。時代と場所によるこの変化からもわかるように、女性たちは多様な存在であるにも関わらず「戦争花嫁」という言葉でひとくくりにされるようになった。一方1960年代後半には、同じ現象であっても「国際結婚」という呼び方が一般的となり、必ずしも否定的なとらえ方ではなくなっていくのである。 この呼称は当事者にとっては現在なお心に残っており、調査に際して「戦争花嫁」という言葉を否定的にとるインフォーマントが存在していたこともハワイにおける調査から明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度のハワイにおける調査では、「戦争花嫁」のひとりとして、これまで中心的に活動してきた方にお会いすることができ、その方から数人の対象者を紹介していただいた。じっくりとした調査を進めることはできなかったものの、ネットワークを広げることができ、27年度に改めて聞き取り調査を行うための基盤を築くことができた。 ハワイにおける「戦争花嫁」に関する記述を調べるために、ハワイ大学の図書館で新聞記事の検索も行った。現在進行中であるため、こちらも27年度の調査で進めていく予定である。 戦後、日本からハワイに移住してきた人たちを対象に発刊されていた『イースト・ウェスト・ジャーナル』の分析を進める予定であったが、現地での時間が足りなくなり、26年度は十分に行えなかった。ただし、一部を入手することができ、それに関しては読み進めた。
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今後の研究の推進方策 |
ハワイにおいて、文献調査と資料収集を進め、ホノルルの都市開発に関する分析を進める。またホノルルで展開されているネットワークの調査も行う予定である。ライフヒストリーの調査に関しては、「戦争花嫁」、国際結婚をして日本からハワイに移住してきた人などを中心に、戦後ハワイに移住した日本人の聞き取りを進める。木曜午餐会という日本人が中心に勉強会をしている組織があり、それに関しても調査を開始する予定である。 日系社会とのつながりが深いことを考慮し、発展的分析のためにも各地の日系センターにある資料の閲覧を進める。 ここまでの研究成果をいずれかの学会で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画時より円安となっており、27年度の調査費用としてできれば回したいと考えたため、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費の一部として利用する予定である。
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