研究課題/領域番号 |
26370935
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
影山 穂波 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00302993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジェンダー / 居住空間 / ハワイ / 権力 / 新一世 / 桜 |
研究実績の概要 |
ハワイで生活をしてきた日本人・日系人にとって、心のよりどころとなるもののひとつとして、桜の存在があげられる。桜を日本人の心と重ねて考え、日本とのつながりを求めて、アメリカハワイでは桜の植樹が行われた歴史がある。そこで平成28年度に引き続き、ハワイにおける桜をめぐる現状と展開を検討した。ハワイでは、温度差のあるハワイ島のみならずオアフ島においても桜が植樹されている。沖縄桜の品種であるオアフ島ワヒアワの桜はソメイヨシノより色が濃く、長期間にわたり開花していることで、ホノルル等からも花見に訪れている。観光用のトロリーバスも期間限定で走っている。トロリーバスでは花をめでるとともに、弁当を食べたりカラオケをしたりしている。ワヒアワ地区では日系人会が中心になり、フェスティバルも行われている。このフェスティバルは、ワヒアワ地区の日系人にとって、地域の交流を兼ねた活動として継承されているものであった。しかし日系人会のメンバーは高齢化が進んでおり、今後の課題も大きい。近年、この桜ではなく、色の薄いソメイヨシノに近い「日本らしい」桜を植樹する活動が展開されていることも分かった。活動を展開している一人は、「戦争花嫁の世代にも桜を見せたい」と語った。その人は、日系人との国際結婚の中で桜の重要性に気が付いたという。一方で、ハワイの桜に関する動きは一部の人たちに共有されたものであり、普及されたものとなっているわけではなかった。桜をめぐる活動を中心にハワイにおける日本的なるものを検討した。この調査の一部は、影山(2018)にまとめた。 文献収集に関しては、ハワイ大学の図書館と日本文化センターのリソースセンターを中心に調査を行った。ハワイにおける位置づけという視点から日系人から現在にいたる歴史的背景についても研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハワイにおける文献調査と資料収集を進め、新一世の女性たちへのインタビューを進めてきた。日系人、日本人の状況を調べるために、ハワイ大学の図書館とハワイ日本文化センターの資料室で検索収集を行った。インタビュー調査に関しては、「戦争花嫁」の方への調査はあまり進まなかったが、新一世で国際結婚をした方には調査を進めることができた。新一世の方をはじめ日系の方にとっても、心のよりどころのひとつに「桜」があり、オアフ島における桜の花の移植を進める事業が始められていることが分かった。その活動の中心メンバーの一人からは、現状と今後の展望を聞いた。また桜にまつわる調査ではワヒアワの日系人会の会長にも調査を行った。資料の分析は、収集してきたもの、日本からもアクセスできるものを含め読み進めた。
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今後の研究の推進方策 |
桜の調査が2018年の1月になってしまい、一部調査が残ってしまったため、前年に引き続き、ハワイ在住の戦後移住の日本人女性へのインタビューを中心に研究を進める。2018年は日本からハワイへの移住開始150周年にあたり、その文脈での調査も行う予定である。桜の移植を進める会に関する調査も進め、新一世の日本人にとってアイデンティティを見出す象徴としての桜とその果たす役割についても検討する。ネットワーク調査に関しても進める予定である。 日系社会とのつながりが深いことを考慮し、発展的分析のためにも日系センターにある資料の閲覧を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の調査が2018年1月となってしまったため、最終年度としてのまとめが間に合わず、一部調査を延長することとした。日系人とのつながりに関する研究に発展させるために2018年度より新たな科研費の申請をしていたが、その内容との関連も含めて、本研究をいったんまとめるためにハワイにおける新一世の日本人女性に関する研究を行う。
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