平成29年度に引き続き、ハワイにおける桜をめぐる現状と展開を検討した。ハワイで生活をしてきた日本人・日系人にとって、心のよりどころとなるもののひとつとして、桜の存在があげられる。気温の寒暖差のあるハワイ島のみならずオアフ島においても桜が植樹されており、沖縄桜の開花が見られるワヒアワ地区では、日系人会が中心になり、フェスティバルも行われている。ワヒアワ地区は比較的寒冷であるため、「日本らしい桜」も花をつけることが分かり、複数本植樹されている。この植樹活動をきっかけに、日系人の桜をめぐる活動とともに新たな日本人の活動が展開されるようになった。 2017年9月に設立されたハワイサクラ基金では、植樹から育成まで桜を見守る活動を始めた。最初に桜守を日本から呼び、植樹した桜の剪定を行うとともに、すでに根付いている沖縄桜の育成に関するアドバイスも受けた。こうした活動の中から、桜をめぐる活動は、一部の新たな日本的なる桜を植樹する活動から、広くハワイにある桜をいつくしむための会へと少しずつ変化しながら、ネットワークを拡大していた。桜は「そこにあるべきものと考えてきた日本人にとってかけがえのないものである」というハワイサクラ基金のメンバーの語りは、海外に生活をする日本人の心のよりどころを生み出している意義を示すものといえよう。 日々の生活の中でのネットワークの形成とともに、「桜」という形あるものが精神的支柱として果たす役割を検討するなかで、ハワイにおけるふるさとをいかに形成するのかという課題の一側面を明らかにすることができた。 文献収集に関しては、ハワイ大学の図書館と日本文化センターのリソースセンターを中心に調査を行った。ハワイにおける位置づけという視点から日系人から現在にいたる歴史的背景についても研究を進めた。
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