研究課題/領域番号 |
26370973
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
宇田川 妙子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 准教授 (90211771)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ローカリティ / ローカル・コミュニティ / イタリア / グローバル化 / アイデンティティ / 食 |
研究実績の概要 |
本研究3年目は、前年度同様、①現地調査の続行、②その整理と分析のための理論的考察、に焦点を当てた。 ①昨年度同様、ローマ近郊のロッカプリオーラという町にて、約2週間、彼らのローカリティ意識の変容に関する調査を行った。今回は、世代間格差ともに、住民の出身地にも焦点をあてた。そのなかで、親が町外出身者である、いわば「よそもの二世」の若者たちの町づくり運動という興味深い事例を調査し、ローカリティとアイデンティティの複雑な関係をみることができた。また、近隣の町々でも調査を開始し、まずはその概要(祭りなどの町づくり運動)を把握した。 ②これまでの調査からは、イタリアでも人・モノ・情報の移動は激しくなっているが、町というローカルな場への帰属意識は強く維持されていることが分かっている。その考察のため、引き続き、空間論、グローバル/ローカル論にかんする理論的な考察を深めた。 またその過程で、イタリアの場合、この問題に具体的に取り組むためには「食」に注目することが有益であることも浮かび上がった。ゆえに食という視点から以上の議論にかかわる先行研究の渉猟を開始し、これまでの調査資料もその視点から再考する作業を始めた。また、ナポリのUniversita degli Studi Suor Orsola Benincasa di Napoliで同じ観点から研究している研究者とも意見交換をし、今後調査協力を行うこととした。なお、この問題にかかわる平成28年度の成果の一部は、シンポジウムや講演会等で公表する機会を得た(研究発表欄参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度の最も重要な目的は、ロッカプリオーラでのローカリティにかかわる現地調査を大方終了し、それとの比較のため周辺の町々での調査を行うことであった。それぞれおおむね予定通りに進展している。特に「よそもの2世」の若者たちの町づくり運動に出会えたことは、今後の考察にとって極めて有意義であった。 また、理論的な考察も順調に進展しており、食という視点の重要性を見出して分析を深めるとともに、シンポジウムなどのかたちでその考察の一端を公表し意見交換をする機会も得ることができた。食の問題に関しては、イタリアの大学研究者(Universita degli Studi Suor Orsola Benincasa di Napoli)との今後の協力関係に関しても議論が始まっており、29年度以降さらなる発展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は最終年度となる。ゆえに、これまでのロッカプリオーラでの調査資料をまとめるととともに、それを基に補足調査を行う。また、それと同時に、周辺の町々での調査も進め、この地域におけるローカリティ意識や運動にかかわる概要を把握する。 一方、理論的な問題に関してもまとめに入るが、同時に、食という視点からイタリアのローカリティのあり方を考察するという作業をさらに深めるため、28年度に協力を得ることができたUniversita degli Studi Suor Orsola Benincasa di Napoliの研究者との議論を続け、ナポリ周辺の町づくりの事例の調査にもつなげる予定である。
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