研究課題/領域番号 |
26370974
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
水島 未記 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (70270585)
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研究分担者 |
丹菊 逸治 北海道大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80397009)
白石 英才 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10405631)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニヴフ / サハリン / アムール / 民族植物学 / 環境 / 生態人類学 / 植物利用 / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
平成27年度には、当初の研究計画から変更し、ハバロフスク地方・サハリン州北部両地域の現地調査を実施した。調査は、研究代表者水島および研究分担者丹菊が、別の研究課題で現地に滞在していた研究分担者白石と共同で、9月8日~22日の日程で行った。 ハバロフスク地方においては、前年度に引き続き、ハバロフスク州郷土博物館のマリーナ・オシポヴァ氏の協力を得ることができたため、ハバロフスク市内だけでなく、アムール川下流域に位置するニコラエフスク・ナ・アムーレにおいて調査を行った。 ニコラエフスク・ナ・アムーレ周辺およびチリャ村における話者数人からの聞き取り調査および周辺の森林および湿原における植生・植物相の調査を行った。本年度は、聞き取り調査の際には、従来どおりの植物資源利用文化に関わる情報のほか、ニヴフの伝統的な集落の位置について重点的に聞き取った。また、植生と植物相に関しては、前年度に確認したサハリン北部との差異について補強する情報を集めた。同時に、規模の大きいミズゴケ湿原を当該地域では初めて実見することができ、ミズゴケ湿原に関する限りはサハリン北部との植物相のちがいはあまり見られないことを確認した。 サハリンにおいては、ネクラソフカ村で話者数人からの聞き取り調査および周辺の森林および湿原における植生および植物相の調査を行った。本年度は、これまで訪れたことがなかった集落周辺の野外に話者とともに出かけ、ベリーを採取しながら聞き取りを行うことができた。湿原や山火事跡地等、特定のベリー類が特に高密度に分布し、採集に好適なポイントについて知っているということが重要であることを、確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査については、ハバロフスク地方およびサハリン州北部の両地域で一度に調査を実施し、聞き取りおよび植生・植物相の調査を行うことができた。これは想定以上の進展である。特にサハリン北部においてはこれまで訪れたことがなかったベリーの採取場所を話者とともに訪れ、採取しながら聞き取りを行うことができ、さまざまな新知見を得ることができた。 しかしながら、特にアムール川下流域においては、ニヴフの伝統的な集落が現在の居住からはかなり離れて分布しており、訪問して植生等を確認することが困難であること等の問題が浮き彫りになってきた。 また、文献および既存録画データの翻訳・分析は、研究代表者の勤務している博物館のリニューアルがあったため業務多忙となり、予定どおりに進まなかったため、全体の進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、平成27年度に引き続き、ハバロフスク地方およびサハリン州北部の両地域での現地調査を実施する。また、遅れている文献および既存録画データの翻訳・分析を進める。 加えて、明らかになった研究推進上の問題点を克服するため、新たに衛星画像の解析(リモートセンシング)による植生等の把握の試行も始める。ニヴフの伝統的な居住地域における植生、特に集落周辺のベリー類の採取に適した環境の分布および集落からの距離等について、リモートセンシングを導入することで、より正確な分析が可能かどうかを見極め、有効であることが確認されれば、次の研究課題において本格的な調査を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた備品の購入を先送りし、当面は既存の物を使用していること、また、文献および既存録画・録音データの翻訳・分析が予定どおり進まなかったため謝金の支出がなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
2年間の現地調査で録画データが蓄積されてきており、これを安全に保存し、分析するために、予定していた備品であるRAID対応ハードディスクを新規購入する。また、文献および既存録画・録音データの翻訳量を予定より増やす。 新たに着手するリモートセンシングの試行のために、衛星画像の購入および処理に次年度使用額の一部を使用する。
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