研究課題/領域番号 |
26380020
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
野崎 亜紀子 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (50382370)
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研究分担者 |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40281779)
川瀬 貴之 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (90612193)
嶋津 格 千葉大学, 法経学部, 名誉教授 (60170932)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスク / 自由 / リバタリアン・パターナリズム |
研究実績の概要 |
初年度は、研究実施計画に沿って、本研究テーマの議論の枠組の構築に力点を置き、各研究者間での検討を行った。本テーマに関わる研究状況から、意見交換および確認の機会がより必要であると考え、計3回の合同研究会を開催した。 《具体的内容》第1回(2014年8月4日)北海道大学東京オフィス:野崎亜紀子「Sarah Conly, Against Autonomy: Justifying Coercive Paternalism, Cambridge University Press, 2013.の検討」/第2回(2014年11月7日)京都大学:橋本努「リバタリアン・パターナリズムの検討:カーネマンの本を読む」/第3回(2015年2月18日)北海道大学東京オフィス:嶋津格「リスク問題と個人の自由)、川瀬貴之「ファインバーグの権利論はリスク社会を生き延びるか」 第1,2回は、近時台頭するリバタリアン・パターナリズムの議論を契機として、パターナリズムと自由との異同とその境界、及び自由を強化する技法としてのパターナリズムについて、検討の方向性を探った。第2,3回は、リスク概念について検討した。従来のリスク論で取り組まれてきた、リスクを最小化し管理しようとする方向性で秩序問題を検討してきた従来の問題枠組みから、リスクを分散しその管理を一元化しない方向性での規範的秩序論の構築という問題枠組みの可能性を議論した。 《意義・重要性》初年度の上記取り組みは、既存の枠組みとは異なる問題枠組みの下で「リスク社会における自由」論を構築しようとする本研究にあって、その新たな枠組み構築をする上での根本問題への取り組みであった。必ずしも十分なこの新規の問題枠組みの構想を構築するにまでは至らなかったものの、本研究の基盤構築を整えたというところに意義が認められ、またこのことは本研究遂行に際して必須の取り組みであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者は北海道、東京千葉、京都と遠隔地に研究拠点を有しているが、メール等での情報交換に加え、本研究専用のウェブサイトを開くなどして、情報共有が比較的順調に行うことができた。研究会を開催する場所についても、分担研究者所属大学のオフィス利用が可能であったことから、交通上便利な場所を利用することができ、研究会開催に際して十分な時間を確保することができた。計画では年2回の合同研究会の開催を予定していたが、研究者間の本研究についての進捗状況を共有し、議論を進めていくためにも、3回の研究会を開催した。これにより、一層本研究テーマが抱える課題に対する共有を進めることができた。ただし、特に既存のリスク論上でも課題となってきた「安心」と「安全」の関係を規範理論上どのように捉えるのか、またリスク拡張型秩序論という構想をどのように理論化し得るのかといった点について、必ずしも研究者相互で認識の共有にまでは至らなかった。この点は初年度の残された課題である。 上記の点をも含めて研究者相互で理解は共有されており、おおむね順調に進展しているといって良い。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に方向性を示した本研究課題を検討する上での問題の新たな枠組みを明確にし(第4回研究会(平成27年6月開催予定))、自由とパターナリズムの接続と切断について、法実践の局面を注視するとともに、規範理論としての構築に向け検討を重ねる。予定していたIVR:法哲学社会哲学国際学会連合世界大会でのワークショップ開催については、本大会の開催日程上全員の参加が困難(日本の大学においては講義・前期試験日程と重複すること)なこととなり開催に至らないが、最終年度である次年度に国内学会における成果発表としてのワークショップ開催に向けて、検討を重ねることとする。 法実践の局面については、引き続き医科学研究規制の現状と動向に着目する。今日我が国の医科学研究に係る規律は、時に安全性の確保を規制の根拠とすることによって、研究の自由、患者の医療アクセスの自由との不均衡問題が生じているようにも見える。この点に着目して議論の動向のサーベイを行う(川瀬、野崎)。 理論化については、こちらも引き続きリバタリアン・パターナリズムの議論と近代法の思考を支えるリベラリズムとの理論的関係性を明らかにするべく、社会哲学的議論の潮流をサーベイするとともに理論構築に向け検討を行う(嶋津、橋本)。 各研究者の日常的な研究への取り組みを受けて、年間4回程度の研究会を京都、東京、北海道で開催し、最終年度の成果公開(国内学会におけるワークショップ開催及びその成果の刊行)を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
極力合理的な研究費利用に努め、交通費、物品について出来る限り安価な交通手段および物品を購入したこと、及び研究会の会場として、研究者所属機関の会議室が利用出来るよう開催日程の都合を付けることで、会場費の節約が可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究者が各々遠方の研究機関に所属しており、研究会の会場として有料の会場を利用せざるを得ない場合が考えられる。このため有料会場を利用しての研究会開催に当たり、会場費としての使用が予定されている。この他、本研究の遂行に当たり意見を伺いたい研究者を研究会に招聘する際の交通費としての利用が見込まれている。
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