研究課題/領域番号 |
26380180
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
申 東愛 北九州市立大学, 法学部, 教授 (80382406)
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研究分担者 |
南 京兌 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50432406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子力政策 / 規制行政 / 取引費用 |
研究実績の概要 |
2011年の福島事故以降、多くの国では原発を含め、エネルギー政策について多くの議論を行っている。このなか、ドイツやスイスは「原発廃止」政策に転換し、再生エネルギーの比重を高めることを決定している。しかし、日本は原子力を基本エネルギー源(Base Load Power Source)とし、原子力の再稼働や海外の市場拡大に力を入れているなど、原発政策の「現状維持」における変化は見られない。このような相違はなぜなのか。これについて分析を行っている。 まず、申の「日本の原子力エネルギー政策の連続性と変化に関する研究」では、戦後、日本の原子力政策の制度化過程、原子力産業体制の構築過程(原子力政策の制度構築化)、原子力政策の戦略産業化過程(制度の自己強化過程)と区分し、分析を行っている。また、福島以降の原発の再稼働を含め、原発政策の制度化における利益拡大(原発政策共同体の多元的拡大過程)について分析している。 次に、南は、「日本の原子力事故と行政組織変化の政治過程」について分析を行っている。日本の原子力規制組織は、原子力事故に対応するため、原子力の推進機関から規制機関を分離し、独立規制機関として変化している。また、「日本の国家機構の変化と連続性―官庁形整モデルの適用―」では、国家政策の変化による国家機構、組織の変化について分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は「ドイツ・スイス」、「日本・イギリス」、「アメリカ・韓国」の6カ国を対象とし、「原発廃止」、「現状維持」、「原発増設」とコーディングし、「立法コスト」「エージェンシーコスト」などの取引費用で比較分析を行うものである。 しかし、福島事故や各国の政権交代などにより、原子力政策にも多くの変化が見られ、当初の仮説、資料などの追加検討が必要になっている。そのため、当初の研究計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の計画は、次の二つの柱から構成される。第一は、政策変化の相違を原発廃止国・現状維持国・増設国の三つに分けて、「立法コスト」に基づき分析する。第二は、「エージェンシーコスト」との接合に基づき申請者と分担者が1本ずつの単著論文を執筆する。具体的な計画としては、9月に現地調査やインタビューを行う。そのために申請者と分担者が各国の原発政治のプロセスを日本語、英語、ドイツ語、韓国語の一次文献に依拠して把握する。研究会は10月と2月に行い、各事例研究を整序し、全体としての統一性を見極める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度では、研究会・聞き取り調査の旅費・関連書籍の購入などが多く計画されていた。しかし、研究対象国の原発をめぐる異論が多くなり、文献調査等の下準備の時間が計画より多くなった。そのため、当初予算の旅費と謝礼分が執行されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の研究計画、日程に合わせ、聞き取り、出張を行う予定である。
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