研究期間の最終年度は研究成果の発表の年で、主に投稿した論文のリバイスおよび論文の更なる品質向上を行う予定であった。本年度はこの研究期間に執筆した論文を順次投稿し修正を行った。本年度、2本の論文を投稿したもののリジェクトとなり、再度投稿中である。今後もリジェクトが続くようであればレフリーの指摘およびコメントを総合すると、まだいくつかの修正が必要であるように感じる。 研究期間全体を通じて、為替相場の期待や予想がどのように形成されるかにいくつかのアプローチで取り組み、またその他派生的に進んだ研究からいくつかの重要な知見が得られた。主要なものを紹介すると、2017年にPhysica Aに掲載された論文においては、為替相場の変動についてHoshikawa and Yamaguchi (2013)の方法を改善し、さらに外国為替市場介入の効果を検証した。為替介入を行って為替相場を大きく動かすことができた場合、その後為替相場が介入の効果を相殺するようにリバウンドすることを示した。ただし、為替介入は効果がある時期と小さい時期があり、介入の効果が大きい場合にはリバウンドが確認できるが小さい場合にリバウンド効果も確認されなかった。この論文に関しては、海外の学会でも報告し、論文出版前に海外研究者から学会報告が引用されるという他の研究者への影響があった。 その他の論文についても論文投稿中にレフリーから多くのコメントをもらい、思わぬ方向に研究が進むというよい影響を受けた。そのような論文として、マイナス金利について債券取引のキャピタルゲインを用いて説明をした論文や金融資産価格(株価および為替相場)の変動から異常な変動を検出しようという論文である。
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