研究課題/領域番号 |
26380525
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
長山 宗広 駒澤大学, 経済学部, 教授 (80453562)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | グローバル都市 / 上海 / 東京 / アジア経済 / 地方創生 / イノベーション |
研究実績の概要 |
今年度は、所期の研究目的で言及した「アジア都市の成長とグローバル都市・東京のプレゼンス低下」に関する論文を執筆した。そこでは、世界経済の多極化・アジア経済のブロック化の動向について、「フラグメンテーション」「グローバル・バリュー・チェイン」「オープン・イノベーション/リバース・イノベーション」の鍵概念から実態を明らかにした。その上で、アジアの諸都市と東京のデータを分析し、アジア経済の中心がもはや東京ではない事を再確認した。欧米系の多国籍企業の多くは、中国の上海・北京にアジア地域統括本部を設置し、そこを中国市場向け・BOP市場向けの研究開発拠点としている。その一方で、欧米系の多国籍企業からの技術移転を進めた中国の現地企業が台頭し、中国発の多国籍企業が誕生する。中国政府と中国発の多国籍企業は連携して中国国内市場およびアジア市場を席巻し、さらに中国発の新しいルール・制度の構築を目指し、それがアジアの新しいブロック経済化の動きと軌を一とする。 日系の多国籍企業の多くは、加工貿易モデルを未だに踏襲し、中国市場での現地化が進まない。「国家戦略特区」の指定を受けた東京都は国際都市の旗を掲げるものの、未だに古典的なグローバル・シティ論(フリードマンやサッセン)の枠内で議論し、中国発のアジアの新しいブロック経済化の動きを看過している。当初の研究計画では、オープン・イノベーションによる大企業とスタートアップ企業の連携関係などを見出し、日本の製造業の新たな創業モデルを見出すことにあった。そのため、ソニーや富士通など日本の大手電機メーカーに対する実態調査を進めたが、上記のような「グローバリゼーション再考/グローバル都市再考」を踏まえ、今後は中国発の多国籍企業に対する調査を進める必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に掲げた「オープン・イノベーションによる大企業とスタートアップ企業の連携関係」については大手電機メーカーを事例に実態調査を進め、その成果を学会発表する段階に入っている。 しかしながら、研究計画に掲げた「メイカーズ革命とデジタル起業家」に関する調査は滞っている。その理由は、2014年度、筆者(研究代表者)は上海で在外研究にあり、日本国内のデジタル起業家の調査を実施しにくい状況にあったためである。
|
今後の研究の推進方策 |
「日本の製造業の新しい創業モデル」を見出すことが本研究の課題であり、その仮説として「オープン・イノベーションによる大企業とスタートアップ企業の連携関係」や「メイカーズ革命とデジタル起業家」などに注目し実態調査を進める計画にあった。 ただ、2014年度、中国の世界戦略とその実行(AIIBや一帯一路など)が急速に進み、アメリカ主導のグローバリゼーションの意味合いも変容してきた。そして、アジア経済の加工貿易モデルもまた変容し、日本の戦後から続く加工貿易モデルは機能不全に陥りつつある。円安を前提に、日本で製造し、中国で企画・販売するといった、従来の機能分担が逆転するケースも散見されるようになった。 こうした状況を踏まえて、今後の研究では、「中国系企業との連携を通じた日本の製造業の新しい創業モデル」に注目し、新たな調査対象として追加したい。中国系企業の日本進出(対日直接投資増加策)を通じて、日本の製造業との新たな連携関係を見出せれば、縮小傾向の地場産業を再生する地方創生モデルを描くことができるかもしれない。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は在外研究のため中国・上海に滞在していた。そのため、中国での調査活動に関する「旅費」を支出する必要がなく、次年度使用額316,347円が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(316,347円)は、その分を海外調査旅費に充当する予定。
|