本研究は、中国市場の戦略的位置付けの変化、韓国自動車メーカーの躍進、日系メーカーの新興国戦略と調達戦略の見直しといった競争・市場環境の変化の中、(1)日中韓サプライヤー取引関係の変化と分業構造の変化、(2)(1)がグローバル生産・開発活動にもたらす影響、(3)本社と現地拠点の組織間関係体制、(4)製品及び市場戦略の比較とキャッチアップ、(5)中国及び韓国サプライヤーの能力構築プロセスと顧客・市場開拓、などの側面から、分業の見直しと競争のダイナミズムを明らかにすることであった。 最終年度は平成28年度であったが、研究期間内に、一部の研究成果公表に無理があったため、期間延長申請を行った。それで、平成29年度には、研究成果の公表に勤めた。 主な研究成果の内容は、新興国のように、部品供給サプライヤーシステムの貧弱な地域においては、サプライチェーンのグローバル化のロジックを明らかにした。つまり、グローバル生産拠点の展開・拡大による生産能力とのズレにより、サプライチェーンはOEMの系列や日本企業間の取引を超えて、第3国のサプライヤーとの取引が活性化されることを明らかにした。また、市場拡大と地域の分散の中で、こうした生産のグローバル化と地域分散と拡大は、部品供給を担うサプライヤーにとっては、グローバル成長戦略の新しい示唆を与えると同時に、日本型取引システムの象徴ともいえる「系列システム」とその変貌究明という新しい研究課題が必要とされるだろう。更に、今回の研究課題の遂行で得られた韓国企業の成長要因などに関する議論は引き続き、次回の研究課題に盛り込み、遂行していく予定である。
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