研究課題/領域番号 |
26380914
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
徳永 豊 福岡大学, 人文学部, 教授 (30217492)
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研究分担者 |
田中 信利 北九州市立大学, 文学部, 教授 (90236612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重度・重複障害 / 共同注意 / 要求行動 / 発達支援 |
研究実績の概要 |
障害が重度な子どもに対する個別の教育支援を充実させるために、発達評価と目標設定の妥当性及び行動項目による発達評価に関して、以下の点を検討した。 (1)発達評価の妥当性の検討:引き続き、障害が重度な子どもと日常的に活動する教員の協議を踏まえた評価データと、遊び場面と構造化された働きかけへの応答(共同注視、応答的共同注意、始発的共同注意)場面における観察データの相関を手がかりに、行動項目の妥当性を分析し、その課題を検討した。 (2)発達段階の意義(段階・意義)に関する妥当性の検討:発達評価の行動項目と段階・意義の関係に関して、統計的分析手法を用いてその妥当性を検討した。Ward法によるクラスター分析で行動項目を検討し、段階意義が5つのクラスターから構成されることが示された。各クラスターは、学習到達度チェックリストの観点と関連性が高いことが明らかとなった。 (3)重度・重複障害児の発達評価:引き続き、重度・重複障害児が教育を受けている特別支援学校の教諭による発達評価を実施した。具体的な行動としては、子どもの注視行動、共同注視、共同注意の成立、やりとり行動、要求行動であった。対象者は32名であり、スコア1からスコア18までの幅のある児童生徒であった。発達の状況が2歳(スコア24)以下の児童生徒は、26名であった。評価の根拠となる具体的な行動について、その特性とまとまりを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究については、おおむね順調に進んでいる。 (1)学習到達度チェックリストの行動項目に関して、共同注視、応答的共同注意、始発的共同注意の発達評価に関する妥当性の検討及びクラスター分析による発達段階の意義の妥当性の検討は、おおむね順調に展開している。分析から得られた課題を踏まえて、行動項目の修正に取り組んでいる。 (2)また、重度・重複障害児が教育を受けている特別支援学校の教諭による発達評価に関しては、ある特別支援学校が学校全体として協力可能になった。子どもの注視行動、共同注視、共同注意の成立、やりとり行動、要求行動の評価に関する事例数が増加し、順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画としては、 (1)発達評価の行動項目の検討については、得られた課題を踏まえ行動項目を修正するとともに、これらの行動項目に、要求行動の項目を追加して検討していく。それを含めて再度、妥当性と課題を検討する。 (2)重度・重複障害児の発達評価に関しては、引き続き重度・重複障害の発達評価を追加し、事例のスコアごとの特徴と根拠なる行動の分析を行う。特に、①注視方向(相手の顔、対象物、その他)、②身体の動き、③その他(発話や表情の変化)とし、注視行動、共同注視や応答的共同注意、始発的共同注意の成立パターンを分析する。
なお、最終年度として、研究の結果をまとめ、重度・重複障害児のコミュニケーション指導の基礎に位置づく、共同注視や共同注意の形成に向けた「発達段階に対応した支援行動モデル」を提案する。さらにこれらの結果から、「学習到達度チェックリスト」の改訂に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の打ち合わせを札幌で実施した。参加予定であった協力者の一人が、家庭の事情で参加できなくなり、その分の旅費が残ったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に実施する研究の打ち合わせに参加するための旅費として使用する計画である。
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