新しい教育施策の展開により「特別支援教育」が重視されるようになってきた。しかし、広汎性発達障害に比べると重度・重複障害のある子どもへの対応は遅れている。本研究は、肢体不自由と知的障害が重度な子どもに対する個別の教育支援を検討するために、これまでの研究に加えて、平成28年度は、以下の点を検討した。 (1)発達評価と段階意義の妥当性の検討:発達初期の行動指標を手がかりとする「学習到達度チェックリスト」による評価データと重度・重複障害の子どもと支援者で展開する構造化された活動場面における子どもの観察データの項目ごとに検討し、発達の段階意義との相関を明らかとして、本チェックリストの妥当性を検討し改訂を行った。 行動項目の再検討にしたがって、段階意義との関連性を検討し、それぞれの関連性を示す系統図を作成した。特に国語の観点や算数の観点での行動項目を検討した。目標とする行動指標を検討する際に、手がかりとなるモデルである。 (2)重度・重複障害児の発達評価:重度・重複障害の子どものコミュニケーションの発達水準はその多くが1歳前後であり、その時期の発達里程標とされる共同注意・要求行動に焦点を当てた支援者との相互交渉を分析した。その結果を踏まえて、共同注意・要求行動の系統的な発達を検討した。 事例検討を行い、これまでの行動項目を検討して、要求行動につながる注意行動や反応行動、自発行動を分析した。それを踏まえて、注意・要求行動の発達的系統図のモデルを示した。
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