研究課題
目的:本年度はASD児(4歳)と母親を対象に共同注視を形成するための介入を行った。方法:介入手続きは、プレイルームにおいて30分の母子自由遊び場面を設定し、母子の自由遊びをVTRにより録画した。セラピストは母子の遊びに関与しながらの観察で関わった。自由遊び終了後に母親へのVTRフィードバックで子どもの行動の意味および、母親の対応について話し合った。介入経過:介入開始当初、母親は子どもの行動の意図を理解できず母子の動きはちぐはぐで、子どもの一人遊びになることが多かった。セラピストと母親はVTRを見ながら子どもの行動の意図および、子どもがどこを見ているかについて話し合った。介入中盤では、母親が日常生活のなかで子どもの行動と視線の動きの関連に気づいたことを報告。セ自由遊び場面においても母子相互のやり取りが活性化し、母子ともに楽しそうに話すことが頻繁にみられる。介入後半で母親は子どもと遊ぶのが楽しいと報告するようになり、子どもが母親と微笑みあうようになった。母親が語り掛けながら遊具を見ると子どもの視線は自然と母親の視線の先に向かうようになった。母親は子ども行動の意図がわかりやすくなったこと、子どもが母親の話を聞くようになったことを報告。母子の行動観察からは共同注視が形成されたと考えられたため、子どもに対して介入前に実施したアイトラッカーによる静止画に対する視線を同じ刺激を用いて測定。ところが、子どもは刺激を一瞥するとそれ以後刺激が提示されているPCの画面を見ることをしなかった。そのため、介入後の視線の分析を行うことができず、母親の対応の効果を評価できなかった。考察:介入の評価を行う際、ASDの場合は介入前に用いた刺激を使い評価を行おうとしても、評価者の意図を酌み同じ刺激を注視することがない。ASDの静止画への注視行動の評価は等価の刺激を用いて行うことが必要ということを示している。
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