高齢期になると,記憶の失敗経験が多くなる。それにともない,家族をはじめとした周囲の人々から,その失敗経験を繰り返し指摘されることも増えると考えられる。この指摘が高齢者をネガティブな精神状態,すなわち記憶愁訴へと導く可能性がある。本研究では,健常高齢者が他者から記憶能力低下について指摘されることが,本人の記憶に対する認識(メタ記憶)にどのような影響を与えるのかを検討することを主な目的とする。本研究課題を実施することによって,高齢者の精神的健康を考える上で避けることができない記憶力低下によって生じる問題について,メタ記憶とそれに関連する多角的な側面から明らかにすることができる。 加齢に伴う記憶能力の低下と高齢者のコミュニケーション活動性についての検討を行うため,ネット調査を実施した。調査では,発達的な視点も含めて検討を行うため,高齢者だけを対象とするのではなく,20歳代,30歳代,40歳代,50歳代をも対象に含めて調査を実施した。また,高齢者に関しても,記憶の衰えの認識を幅広くとらえるために,前期高齢者だけではなく,80歳代前半までを対象に含み実施した。 また,高齢者の記憶の認識に影響を与えると考えられる様々な心理的側面との関連について検討を進める上で,高齢者の記憶に対する認識(メタ記憶)と精神的健康度との関係にソーシャルサポートがどのように介在しているのかについて明らかにすることを目的に検討を行った。その成果として学会発表を行った。
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