研究課題/領域番号 |
26381092
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
滝沢 潤 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20314718)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 言語マイノリティ / 住民投票 / 双方向イマージョン・プログラム / 学校選択 / 学校参加 / 教育の専門性 |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア系言語マイノリティの教育保障に関する総合的な研究の一部として、アメリカ合衆国カリフォルニア州における双方向イマージョン・プログラム(TWI)の実施状況とその課題を考察することを目的としている。 平成28(2016)年度は、カリフォルニア州において、2016年11月の大統領選挙と同時に実施された住民投票(州民投票)・提案58の可決についてサクラメント市およびサンフランシスコ市において訪問調査を実施した。この州民投票・提案58は研究計画時には想定されていなかったものの、カリフォルニア州、ひいてはアメリカの言語マイノリティの平等な教育機会の保障の史的展開において重要な意義を持つものと考えられる。そこで、当初の研究目的を踏まえ、その意義と今後の影響についても調査を実施した。提案58は、グローバル経済が進展する中で、多言語能力が移民(言語マイノリティ)のみではなく全ての人々にとって重要であるとの認識に立ち、多言語社会・カリフォルニアの言語的資源を活かした教育の推進を目指すものである。そして、子どもにとって最善の教育を要求するための選択権(choice)と意見表明権(voice)を保護者が有することを明確にした上で、本研究が対象としてきた双方向イマージョン・プログラム(TWI)の創設・実施権限を学区教育委員会に付与するものである。すなわち、1998年に可決した州民投票・提案227は、原則、英語のみ(イングリッシュ・オンリー)の教育の実施を州公立学校に求め、保護者の(バイリンガル教育)選択権や学区・学校の教育の専門性を大きく制限していたが、提案58は、これらの権限や専門性を重視したものである。ただし、提案227可決後、イングリッシュ・オンリーの政策が実施されてきたことで、質の高いTWIを創設・実施するための教員不足、学区間の実施能力の格差などの課題が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、住民投票(州民投票)・提案58の可決について訪問調査を実施した。この州民投票・提案58は研究計画時には想定されていなかったものの、カリフォルニア州、ひいてはアメリカの言語マイノリティの平等な教育機会の保障の史的展開において、1998年に可決された州民投票・提案227において大きく制限されていた保護者の(バイリンガル教育)選択権や学区・学校の教育の専門性を重視したものである。このような注目すべき新たな動向・展開について時宜を得た調査を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度可決された提案58が本格実施されることから、この展開・影響について当初の研究の観点である、双方向イマージョン・プログラムの実施状況とその課題に関する、教育委員会のリーダーシップと学校の自律性、保護者の学校参加、教員の養成・確保と研修、教科書・教材の確保と開発の観点に加え、学区の財政状況と意思決定の観点を加味して研究を推進することとする。
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