研究課題/領域番号 |
26381203
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
竹内 晋平 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (10552804)
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研究分担者 |
達富 洋二 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (40367983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 見せる発話 / 発生機序 / 俯瞰的思考 / 視覚的・身体的表現 / 言語的表現 |
研究実績の概要 |
平成27年度は主に,幼稚園および中学校における美術教育を対象とし,感性の育みを促進するための学習者相互間における「質の高い意思伝達」の効果について,下記の実践的研究によって明らかにした。 1)幼稚園を対象とした研究では,幼児の造形活動を見せる発話の発生機序にはどのような経路が存在するのか,幼児が粘土操作を行うことと見せる発話に至る経路との関わりはどのようなものなのかを明らかにすることを目的とした。この目的に基づき,見せる発話の発生機序を予備的に提示し,〔解決的経路〕の存在を指摘した。予備的提示を受けて,再び保育実践の観察調査とそのエピソードの分析を行った結果,〔解決的経路〕を確認するとともに,見せる発話と粘土操作との間を結ぶ〔往還的経路〕が存在することが示され,この〔往還的経路〕を経て粘土操作を繰り返すことによって、幼児の見せる意思は〔熟慮化〕する可能性があることが示唆された(雑誌論文に該当)。 2)小学校を対象とした研究では,毛筆による臨画を行うことを通して「模倣」による学習効果についての検討を行った。 3)中学校を対象とした研究では,美術科教育における言語活動を教科のねらいと特性を重視した手段的な存在としてとらえる立場をとり,視覚的・身体的表現を含んだ「言語活動等」のコミュニケーションが美術科学習においてどのような効果をもつのかを明らかにすることを研究目的とした。具体的には,共同で線を描く,自他の線描活動を共有する等の視覚的・身体的表現を行うことによって,生徒は造形要素を体感したり,美術の意味を俯瞰的に思考したりしていた点が確認された。また,指導者からの発問や方向付けを経て記述等の言語的表現を行うことによって,生徒は自分なりの造形要素に対する感じ方を確認したり,視覚的・身体的表現と関連づけて自分なりの美術に対する解釈を形成したりする傾向があることが示唆された(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
造形・美術教育が目標とする点への到達と感性の育みを促進するための学習者相互間における「質の高い意思伝達」の効果について,保育・授業実践を通して明らかにすることができた。特に中学校美術科を対象とした研究では,本研究課題の核となる「他者への伝達」という言語活動等の効果を念頭におきながらも,「学びの自覚」を重視した効果分析を行うことができた(投稿中)。このため,計画どおり順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,教科目標への到達と感性の育みを促進するための学習者相互間における「質の高い意思伝達」の要件を授業実践研究によって明らかにする。最終年度である平成28年度においては,中学校美術科を対象とした研究活動を推進する計画である。 また,平成28年度中に本研究課題を総括するシンポジウムの開催を計画している。同シンポジウムでは,学習者間および学習者-教師間の言語を含めたコミュニケーションが図画工作・美術科の学びにどのような効果をもたらすのか,そして美術の学びにとって有効な指導とは,どのような教授行為なのかについて探ることを目的としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,中学校美術科を対象とした授業実践研究に関する雑誌論文を研究紀要(平成27年度中)に投稿することを予定していたが,計画していた量と比較して多くの映像解析が必要となったため,平成28年度中の投稿へと変更を行った(平成28年5月現在,すでに投稿済みである)。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額である24,835円については,変更後に投稿先となった研究紀要(平成28年度中)の抜刷印刷費,およびそれを関係者に成果発信する際の郵送費等として使用する計画である。
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