研究1年次に実施したアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンにおける公立中学校・高校のNIE授業の視察により、OECD加盟国の教育状況として、キー・コンピテンシーの育成が学校教育の目標とされていることが分かった。新聞活用もまたキーコンピテンシーの育成の中に位置付けられており、中でも21世紀型スキルの育成を目標として掲げている。 研究2 年次にはアメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市の公立小中高、私立幼小中高一貫校、オーストラリア南オーストラリア州アデレード市の公立中高を視察した。アメリカと同様にキーコンピテンシーの育成が重視され、21世紀型スキルの育成を目標として設定している。新聞活用は学校図書館の多様なメディアの一つであり、アメリカと同様にコンピュータでの検索による活用が主たるものである。新聞もまたデジタル化の流れは避けられず、情報リテラシーやメディア・リテラシー育成の中に位置付けられる。 研究最終年次に当たる3年次は、新聞活用のカリキュラムのモデル・プランを作成するため、国内外の調査に当たった。ただし、これまでの海外視察ではアジアの状況を調査していなかったため、経済的な発展を続け、教育先進国であるタイ王国バンコク市を訪問し、文部省の学力向上政策を調査した。タイにおいても21世紀型スキルの育成を目標とし、喫緊の課題としている。情報リテラシー、創造的な思考力、批判的な思考力などが重視されている。 ICT活用は21世紀型スキルの育成に欠かせないものとして重要視され、新聞活用は批判的思考力やメディア・リテラシーと不可分の関係にある。それは民主主義の根幹に関わる思考力や判断力を養うための学習材として尊重されているためである。また、市民性教育の根幹を担うものとしてジャーナリズムが重視され、新聞活用もまたその位置付けの中にある。ジャーナリズムは日本の学校教育には見られない視点である。
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