研究課題/領域番号 |
26390123
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
深見 健司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (60463311)
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研究分担者 |
藤田 貴弘 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 研究員 (40416384)
渡部 貴宏 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主席研究員 (90282582)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Vibrating Wire Method / Ultimate Storage Ring / Alignment |
研究実績の概要 |
Vibrating Wire Methodでは、ビーム軸上に張ったワイヤに交流を通電し、磁場との相互作用で強制振動させることによりワイヤ上の磁場を評価する。微小な磁場の検出が可能であり、アライメントに応用すれば多極電磁石群の磁場中心位置を高精度で一直線上に並べることができる。しかしながら、ワイヤの長さと張力で決まる共鳴周波数は環境変化により容易に変動する。平成26年度の目標は、変化する共鳴周波数に通電電流の周波数を追従させるフィードバック制御を行うこと、及び最低検出分解能の言及であった。 共鳴周波数では、ワイヤ振動と通電電流の位相差が90[°]であることを利用してフィードバック制御を0.01[Hz]で行った。フィードバック無しでは、例えば基本共鳴の3次高調波では同一磁場中であっても振幅は1.8[hr]で1/2に減少したが、フィードバックにより振幅の変動を4[%]以内に抑制できた。この変動は共鳴の次数が高くなるほど顕著であったが、フィードバックにより7次高調波でも上記と同等に安定化することができた。さらに、磁場信号用ワイヤが磁場中心付近の極低磁場領域にあっても十分な信号強度が得られるよう、水平、垂直方向に5[mm]離してフィードバック専用ワイヤを平行に張った。2本のワイヤの共鳴周波数にはほぼ完全な相関関係が見られ、フィードバック専用ワイヤの位相だけで信号用ワイヤの振幅を安定化させることに成功した。典型的な磁場勾配の四極電磁石(40[T/m]x0.1[m])を用いて、磁場中心位置の測定分解能は0.1[um]に達することを示した。 磁場中心位置のサブミクロンオーダーでの時間的変動を観測し、周囲温度との相関について示した。フィードバック専用ワイヤを使用することにより、このような測定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に実施を予定していた項目は、(1)単線フィードバックを行うための基礎データの取得とフィードバックの検証実験、(2)三線式ワイヤによるフィードバック試験であった。前者ではワイヤの振幅、位相の周波数応答、共鳴周波数と周囲温度との相関、共鳴次数別の振幅安定度、フィードバックに必要な最低限度の磁場について測定を完了した。後者ではフィードバック専用ワイヤと磁場信号用ワイヤとの共鳴周波数の相関を明確にし、フィードバック専用ワイヤの位相だけでフィードバックが可能であることを示した。 フィードバック専用ワイヤへの通電により発生する磁場の影響を評価するため、通電の有無による磁場信号用ワイヤの振幅、位相の周波数応答を比較し、影響が無視できることを示した。このため、フィードバック専用ワイヤの磁場をキャンセルするため用意していた第三のワイヤであるカウンタワイヤは不要であることを示した。 予定項目は全て完了したが、これらの試験は全て既存の仮架台にワイヤ、及び振動センサを取り付けて行ったものである。測定対象電磁石は1台であったので、磁場中心の測定では電磁石側を既存の遠隔ステージで移動させた。実際のアライメントにおいては、電磁石全台数に遠隔ステージを取り付けることは現実的でないため、ワイヤ側を移動させる。平成26年度に遠隔ステージ付きの三線式ワイヤ用架台を製作する予定であった。しかしながら、「今後の研究の推進方策」の項目に示すバックグラウンド磁場の補正用機器の固定方法などの検討が進まず、製作に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで1台の四極電磁石で試験を行ってきたが、既存の電磁石、及び共通架台を用いて複数台の四極、六極電磁石群のアライメント試験を行う。磁場中心付近の磁場を比較すると、四極電磁石に比べて六極電磁石の方が一般に弱いが、ワイヤへの通電電流値はさらに15倍程度増大可能なので検出限界磁場をさらに低下させることは可能である。しかしながら、地磁気や測定対象外電磁石の残留磁場の影響が無視できなくなる。高い位置分解能を生かすためには、バックグラウンド磁場の遮蔽が必要不可欠である。 測定対象電磁石の磁場を遮蔽せず、それ以外の場所の磁場を遮蔽するため、スライド機構付きのミューメタル製シールド管を製作する。一方で、カウンタ電磁石を設置することにより、バックグラウンド磁場を打ち消す方法も考えられる。こちらは既存の電磁石を用いて試験を行い、2者の有効性について比較検討する。また、撓みによるワイヤの垂直方向位置分布を、ミクロンのオーダーの測定精度を持つ既存の静電型水レベルシステム等を用いて測定する。測定結果をもとに、たわみの補正手法を確立する。これらによる誤差を総合し、最終的な測定精度、確度について評価する。 以上とは別に、ビーム位置モニタとの一体較正も本研究のテーマの一つである。今年度は予定通りワイヤの500[MHz]の高周波を導入するためのワイヤの試作を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の項目「現在までの達成度」で示した通り、平成26年度に遠隔ステージ付きの三線式ワイヤ用架台を製作する予定であった。しかしながら、バックグラウンド磁場の補正用機器の固定方法などの検討が進まず、製作に着手することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は平成26年度分の繰越額を含めて、バックグラウンド補正用機器込みの三線式ワイヤ用架台を製作する。
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