今回の研究課題では,楕円モジュラー形式にまつわる数論のいくつかの問題を,実際にコンピュータを使って計算して解明することを主眼にした.3年間のうち1年目は主に,重さ1のヘッケ固有形式に付随する,有理数体の絶対ガロア群の2次元の複素アルティン表現の計算に取り組んだ.特に像が非可解群になる場合が興味深い.導手が平方因子を持たない場合は,計算量の評価を与えることができた.2年目は主に,Maass波動形式の数値計算に取り組み,数値的な不安定さから採用した計算手法に困難があることを観察した.3年目はフリッケ群上のモジュラー形式の零点を考察し,既知の結果の拡張が得られた.
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