研究実績の概要 |
昨年度に引き続き弾性曲線の発展方程式と可積分系との関係で,それを高次元化した定常解である重調和部分多様体を研究した.Riemann 多様体 (X, g_X) から Riemann 多様体 (Y, g_Y) への写像 f の張力ベクトル場を τ とする.τ のノルムの 2 乗積分によって定義される変分問題の解 f を重調和写像という.これは弾性曲線を定義する弾性エネルギーの多次元版である.とくに,X が Y の部分多様体で g_X が g_Y の導入計量であるとき,X を Y の重調和部分多様体という. 昨年度は主曲率が全く重複しない場合の一般的な定理を得た.今年度はその結果を拡張し,重複がある場合に次の定理を得た. M を n+1 次元 Euclid 空間の重調和超曲面とする.すると,τ を平均曲率(主曲率の和)として -τ/2 は主曲率になるので,それを n 番目の主曲率 λ_n とする. n+1 次元 Euclid 空間の超曲面で,主曲率の重複度がすべて等しく,各主曲率に対応する主曲率ベクトル場 v_i が次の意味 (*) で十分に曲がっているならば,それは極小超曲面である.条件 (*): 互いに異なる主曲率に属する任意の i, j, k < n について g(∇_{v_i}v_j, v_k) ≠ 0 が成り立つ. ただし,この条件 (*) は "τ = 定数 c" で定められる M の特性超曲面 F_c の「正規直交枠 {v_i}_{i<n} が既約」というもう少し弱い条件に置き換えることが出来る.
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