研究実績の概要 |
2000年にBidaut-VeronとVivierは滑らかな境界をもつ有界領域上のLane-Emden方程式の正値解の存在・非存在に関する結果を発表した。そこでは荷重測度に関するMarcinkiewicz空間(弱L^p空間)の議論が巧妙に用いられたため滑らかでない領域への拡張には無理があった。本研究では,Lipschitz領域において境界上に孤立特異点をもつLane-Emden方程式の正値解の存在・非存在について考察し,次の結果を得ることができた。簡単のために境界は原点を含むとし,M(x,0)で原点に極をもつMartin核を表す。 (1)λが小さいとき,λM(x,0)≦u(x)≦3λM(x,0)を満たす正値解uが存在する。この証明はCranston-McConnell不等式の変形版を示し,不動点定理を用いて与えた。 (2)λが大きいとき,λM(x,0)≦u(x)を満たす正値解uは存在しない。このことはDancer(1998)やPolacik-Quittner-Souplet(1997)により得られた境界増大評価を改良し,強Harnack不等式を用いて証明した。さらに,Lane-Emden方程式に対するHarnackの収束定理を与え,劣解・優解による近似法によりλの境目の存在,つまり,あるλ^*が存在して,λ≦λ^*ならば上記のような解が存在し,λ>λ^*ならば存在しない,ことを明らかにした。 本研究成果を2017年度ポテンシャル論研究集会で発表し,論文としてまとめた。
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