研究課題
最終年度の平成29年度は、前年度に引き続き、国立天文台ハワイ観測所において面分光ユニットの冷却試験を行った。観測にも使用するすばる望遠鏡近赤外線広視野分光器MOIRCS用の焦点部筐体について、冷却パスなどの見直しを行ったところ、観測時の温度に近い約110Kまで光学系を冷却することに成功した。この温度においても、光学系の結像性能は常温時からほとんど変化せず、光束のケラレが生じないことを確認できた。この試験によって、本研究で計画していた面分光ユニットの開発に関わる項目(レンズ・ミラーホルダーの製作、ホルダー単体での冷却試験、ユニット全体の組立・調整、ユニット全体での冷却試験)は全て終了した。今後はMOIRCSの共同利用装置としての状況を考慮しながら、実際の観測に向けた準備を進めていく。開発した面分光ユニットによる観測対象天体の選定に関わる研究としては、本研究で作成した北黄極領域の銀河多波長カタログに基づく、赤外線SEDにおける星形成活動と活動銀河中心核(AGN)の成分分離について、AGNモデルの多様性が結果に与える影響を調べた。今後はその結果に基づき、ダストに隠された活動性の分離について、その精度の評価を詳細に行う予定である。また、本カタログにより選定した赤方偏移3のライマンブレイク銀河について、X線観測衛星Chandraのデータのスタッキング解析を行い、個別の銀河ではX線が未検出のサンプルに含まれる銀河中心核の活動性に関する考察を行った。現在、前年度までに行った電波干渉計VLAのデータのスタッキング解析と合わせて、これらの銀河の星形成およびAGN活動の定量的評価を行い、その結果をまとめている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Astronomy & Astrophysics
巻: 604 ページ: A14, 1-7
10.1051/0004-6361/201730611