研究課題
トレオニン合成酵素はL-トレオニンの生合成を担っているが、複雑な化学反応を経るため、これまで反応機構の詳細については明らかになっていなかった。理論的手法は化学反応過程の解明に有益であるが、トレオニン合成酵素のように複雑な反応系は不確定要素が多く、これまで解明が進んでいなかった。そこで、スーパーコンピュータの利用を推進し、網羅的に反応を探索することで、トレオニン合成酵素のように複雑な化学反応過程を持つ触媒反応を明らかにする。量子古典混合計算(QM/MM)法を用いて、トレオニン合成酵素における化学反応過程の構造変化、自由エネルギー変化を明らかにする。それにより、多くの副反応をどのように抑制して高い反応特異性を実現しているのかという酵素特有の高次機能(反応制御機構)を明らかにし、化学反応の本質を解き明かす。このように生体酵素における反応機構を明らかにする事は、化学における究極的テーマであると共に、効率的な化学反応の反応制御を理解する上でも極めて重要である。トレオニン合成酵素の触媒反応機構の全貌解明を通じて生命機能を支える素過程を分子レベルで解明し、生体内現象の本質的解明を行う。
1: 当初の計画以上に進展している
反応特異性を決定する後半過程を明らかにし、生成物支援機構で重要なリン酸イオンの役目について解明した。また、複雑な電子状態を自動的に生成できるアルゴリズムを考案した。本方法はスーパーコンピュータ利用で極めて重要になると考えられる。これらの研究成果を応用し、関連酵素系における反応機構解明と物性評価も行う事が可能となった。また、反応中間体の長時間古典同力学計算(CMD)を実施した事で、基質の動的挙動について明らかにする事ができた。それにより、エネルギー的にはわずかな差でしかないが、反応性を大きく作用すると考えられる分子配向効果について明らかにできた。これらの結果について現在、論文執筆中である。
(1)前半反応過程の反応機構の解明と(2)新規反応経路探索法の実装を行う事で、トレオニン合成酵素の触媒反応機構全貌を明らかにする。(1)については量子古典混合法(QM/MM)法を用いて前半過程における全中間状態の構造、遷移状態、自由エネルギープロファイルを求める。提唱されている可能な中間体(プロトン化状態、水素結合、コンフォメーション)の相対安定性と反応性を網羅的に検証し、反応特性を明らかにする。(2)については既にアルゴリズムの動作確認はできているため、実装と効率的実行ができるようにプログラミングする。スーパーコンピュータで活用できるように、自動化と高並列化に取り組み、高効率な反応経路探索法となるようにする。作成したプログラムは公開する予定である。
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