研究課題/領域番号 |
26420657
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研究機関 | 広島女学院大学 |
研究代表者 |
真木 利江 広島女学院大学, 人間生活学部, 准教授 (60343620)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 風景庭園 / 保存 / ナショナル・トラスト |
研究実績の概要 |
本研究は、英国のナショナル・トラストによって20世紀後半を中心に取り組まれている18世紀風景庭園の保存・復元活動を対象とし、歴史的環境の保存・復元手法を明らかにすることを目的としている。 平成26年度はトラストの歴史的環境・自然環境の保存・継承活動のうち、風景庭園を含む庭園および林苑の保存・復元・維持管理の活動に焦点を当て、1895年トラスト設立後から1983年イングリッシュ・ヘリテイジ(English Heritage)によって初めて庭園が登録されるまでの期間における取り組みの変遷を明らかにした。具体的には文献調査により、1937年カントリー・ハウス計画(Country Houses Scheme)開始、1948年ガーデン計画(Gardens Scheme)開始、1965年ガーデン・ヒストリー・ソサイエティ(Garden History Society)設立の3つの出来事を区切りとした4期に区分し活動の変遷をまとめた。 またクレアモント庭園について、文献調査と現地調査により地所の変遷とナショナル・トラストによる地所取得、調査、復元・整備の取り組みを整理した。19世紀に王室の地所となった期間、20世紀前半の開発の様相と,ナショナル・トラストによる地所取得に至る経緯および復元に当たって行われた調査について報告した(「クレアモント庭園の解体と復元の始まり」平成26年度日本建築学会中国支部研究報告集、第38巻、pp. 953-956)。またイギリス・ガーデン研究会、広島ランドスケープ研究会での研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進捗している。クレアモント庭園とその他4庭園(Osterley Park and house, Kensington Garden, Ham House and Garden, Kenwood House)の現地調査を行い、クレアモント庭園に関して研究発表を行うことができた。またナショナル・トラストの庭園保存・管理の全体像を文献調査により整理することができた。以上によりおおむね順調に進行しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、ナショナル・トラストによる庭園の保存・復元活動を対象とし、歴史的環境の保存・復元手法を明らかにする調査・研究を進めていく。平成27年度は計画通り、現地調査を行うとともに成果をまとめ日本建築学会計画系論文集または造園学会全国大会論文への投稿を行う。平成28年度は研究成果をまとめ複雑な変遷を持つ歴史的環境の保存・活用のあり方に関する知見を示す。 平成26年度の調査により明らかになった研究を遂行する上での課題と対応策を2点挙げる。まず、各庭園の保存・管理において詳細な報告書が作成されていることが明らかになった。計画では主に2庭園を中心とした現地調査とヒアリングによる研究としていたが、これら報告書の文献調査を含めることを検討する。次にナショナル・トラストの庭園保存の取り組みの中で、とくに重要な位置を占める複数の庭園が存在することが分かった。初めての重要な庭園取得でその後の庭園保存に大きな影響を与えたモンタキュート(Montacute)、当時の文献による再創造が行われたモズレイ・オールド・ホール(Moseley Old Hall)、当時の鳥瞰図にもとづき復元されたウェストバリー・コート(Westbury Court)、特定の時期に限定しない初めての復元であるアーディグ(Erddig)、植物保存計画の中心となっているナイツヘイズ・コート(Knightshayes Court)等である。研究計画ではクレアモント庭園・ストウ庭園を中心に研究を進め、風景庭園の代表的な事例として挙げられているその他11庭園について資料収集と先行研究の整理を行い、本研究に反映させると共に29年度以降の研究課題として発展させたいとしていたが、これらの庭園における取り組みを含め現地調査と先行研究の整理を行うことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピューターの仕様を安価なものへ変更するとともに、アプリケーションソフト(Vector Works)を所属機関が加入している教育支援プログラムを利用することにより年度ごと支払いによる安価な方法で入手できた。また、入手不可の書籍がおおく現物貸借等により対応した。
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次年度使用額の使用計画 |
コンピューターの仕様変更に伴い必要となる周辺機器に使用するとともに、年度ごと支払いによる安価な方法で入手できたアプリケーションソフト(Vector Works)の年度ごとの支払いにあてる。また、入手不可であった書籍購入を試みる。
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