研究課題/領域番号 |
26420657
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研究機関 | 広島女学院大学 |
研究代表者 |
真木 利江 広島女学院大学, 人間生活学部, 准教授 (60343620)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナショナル・トラスト / 庭園保存 / 風景庭園 |
研究実績の概要 |
本研究は、英国のナショナル・トラストによって取り組まれている庭園の保存・復元活動を対象として、歴史的環境の保存・復元手法を明らかにすることを目的としている。 平成28年度は、まず平成27年度の現地調査・資料収集においてナショナル・トラストより受領したクレアモント庭園の行動計画書(Claremont Action Plan)にもとづき、保存・復元活動の概要を報告した(ナショナル・トラストによるクレアモント庭園の行動計画、2016年度日本建築学会大会(九州)学術講演梗概集pp. 665-666)。本計画書は全9巻よりなり、歴史資料・現地調査にもとづき将来像と目標が示された後に、建築物・シート・彫刻,径,眺め,植栽,考古学,今後の課題というテーマ別に方針が示され、7つのエリア別にテーマごとの提案がまとめられ、優先順位と工程が示されていた。具体的な提案では、庭園保存の全体方針に則りつつ、資料の有無や調査・研究の今後の可能性、庭園への訪問者に対する対応を考慮していることを明らかにすることができた。また、この報告に、保存・復元手法に関する考察を加えた論文の日本建築学会計画系論文集への投稿準備を進めた。 これと平行して、同じく平成27年度に受領したストウ庭園の保存計画書に検討を加えたほか、イギリス風景庭園の代表作のひとつであるラウシャム庭園におけるウィリアム・ケントの造園手法についてガーデン・ヒストリー・ソサイエティが発行しているジャーナルGarden Historyへの投稿準備を進めた。同じく平成27年度の現地調査・資料収集にもとづき1960年代に先駆的な庭園保存・復元活動が実施されたウェストバリー・コートの庭園構成の変遷を明らかにし、平成29年度に日本建築学会大会(中国)にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、平成27年度に実施した現地調査・資料収集の成果にもとづき、日本建築学会大会の他、査読付き論文集への論文投稿を予定していた。クレアモント庭園に関しては、全9巻からなる行動計画書を詳細に検討し、日本建築学会大会(九州)での研究報告を行うことができた。また、ウェストバリー庭園に関しても構成の変遷を明らかにすることができた。 しかし、所属機関における運営教務による多忙、特に入試・広報関連業務の多忙のため、クレアモント庭園に関して、保存・復元手法に関する考察を加えた査読付き論文集への投稿が予定より遅れた。また、研究計画ではクレアモント庭園とストウ庭園の保存・復元手法の比較を通して、ナショナル・トラストによる庭園の保存・復元手法を明らかにする予定であり、両庭園の資料を収集し検討を加えたが、その結果、具体的な事例としてはクレアモント庭園を対象とし、ナショナル・トラストによる庭園保存・復元活動の変遷の全体像に焦点を当てる方向で研究を進めることを検討した。理由としてはまず、ストウ庭園はトラストへ委譲された時期が比較的新しく、現在、重点的に研究および復元活動が進行中であり、クレアモント庭園と庭園保存・復元活動状況が大きく異なっているためである。次に、ナショナル・トラストの庭園保存・復元活動は世界的に見ても先駆的な取り組みである一方、英国でも十分に歴史的な検証が加えられておらず、保存・復元の全体像を明らかにすることの学術的な意義が大きく、個別事例の研究も全体的な視野の中で意義を増すと考えられるためである。 以上により研究の進捗状況はやや遅れており、研究期間を予定より1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、クレアモント庭園について、保存・復元手法に関する考察を加えた論文の日本建築学会計画系論文集への投稿を行う。 また、ナショナル・トラストによる庭園保存・復元活動の全体像について、平成27年度に報告済みの概要を発展させ、平成26,27年度に実施した資料収集、主にトラストに関する複数の通史(Rooted in History: Studies in Garden Conservation, The national trust : a record of fifty years' achievement, The National Trust The First Hundred Years, The National Trust: The Next Hundred Years)と年次報告書等にもとづき明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属する研究機関における運営業務、特に入試・広報業務の多忙のために、研究の進捗がやや遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に歴史的環境の保存・復元に関する図書の購入、査読付き論文への投稿料、英国のジャーナルへの投稿準備、消耗品等に使用する。
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