研究課題/領域番号 |
26420787
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
定金 正洋 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10342792)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート / キラル / エナンチオマー / 異性化 / ルテニウム |
研究実績の概要 |
キラルなポリソメタレート(POM)のエナンチオマーの分離技術を確立するのが本研究の目的である。POMとはタングステンやモリブデンの酸化物が作るアニオン性酸化物分子であり、触媒材料やセンサー材料として重要である。このPOMのエナンチオマーを分離することが出来ればエナンチオマーのセンサーおよびエナンチオ選択的な触媒への応用が期待できる。 キラルなPOMとして1つの遷移金属を置換したドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体を研究題材として選んでいる。遷移金属としては電子授受がしやすく、かつ有機物と様々な反応性を示すルテニウムを選択している。 前年度までにこのルテニウム1置換ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体,K7[alpha1-P2W17O61Ru(H2O)],の合成および精製法を確立した。 今年度はこのK7[alpha1-P2W17O61Ru(H2O)]、この化合物のルテニウムに配位している水分子をDMSOに置換したDMSO化合物、L-システインに置換したシステイン化合物、およびL-ヒスチジンに置換したヒスチジン化合物を合成し、液体クロマトグラフィーによる分離を試みた。分離条件を見出すところまでは至っていない。今後は再結晶法による分離を試みる。 更に、K7[alpha1-P2W17O61Ru(H2O)]の合成法を検討している際に、原料である1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体とアルファ2型異性体が酢酸リチウム水溶液中で異性化していることを見出した。このことは、様々な遷移金属置換ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体の簡便な合成法につながる可能性があり、今後のキラル化合物の簡便合成法につながる可能性があるので、更に検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つのルテニウムを置換したドーソン型リンタングステートと様々な有機分子が結合した化合物を合成することに成功した。エナンチオマー分離にはいまだ至っていないが、分離のための化合物を得た。 原料である1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体とアルファ2型異性体が酢酸リチウム水溶液中で異性化することを見出した。このことは、様々な遷移金属置換ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体の簡便な合成法につながる可能性がある。 研究成果は、査読有りの論文2報(1報はWiley, Euro. J. Inorg. Chem.、もう1報はイギリス王立化学会, Dalton Trans.)に掲載された。積極的に国際共同研究も進めており、Dalton Trans.はスペインの理論計算の研究者とフランスの電気化学研究者との共著論文である(ただし、責任著者は本科研研究代表者で筆頭著者は本科研研究代表者の研究室の所属学生)。 また、国内の学会で2回発表している。
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今後の研究の推進方策 |
1つのルテニウムを置換したドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体のルテニウムに様々な配位子が結合した化合物の合成に成功している。中にはキラルなアミノ酸を結合させたディアステレオマー混合物もある。キラルなアミノ酸を結合させたディアステレオマー混合物の再結晶による分離を試みる。 原料である1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体とアルファ2型異性体が酢酸リチウム水溶液中で異性化することを見出した。この異性化を利用すれば、より合成の簡単な1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ2型異性体から、様々な遷移金属置換ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体を合成できる可能性があるので、1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ2型異性体からのば、より合成の簡単な1欠損ドーソン型リンタングステートのアルファ2型異性体から、様々な遷移金属置換ドーソン型リンタングステートのアルファ1型異性体の合成および精製に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
液体クロマトグラフィーによる解析を会社(ダイセル)の無料サービスを利用したので、液体クロマトグラフィーに必要な経費が不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬などはより倹約して購入し、有効に活用する。 よりよい研究成果が出るよう、今年度も研究補助員を雇用する。
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