研究課題/領域番号 |
26430013
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
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研究分担者 |
米田 貢 金沢大学, 保健学系, 助教 (70334787)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カンナビノイド / シナプス伝達 / 海馬ニューロン / 2-AG / アナンダミド |
研究実績の概要 |
本研究では、内因性カンナビノイドおよびその代謝産物がシナプス活動にどのように関わっているのかを明らかにすることをめざしている。昨年度は、2-AG投与の効果について調べた。本年度は、細胞自身が生成・放出する内因性カンナビノイドの作用を調べるために、以下の3つの実験を行った。 (1)CB1受容体を阻害した条件下で、自発性シナプス後電流(sPSC)の発生頻度を種々条件下で測定し、2AG合成酵素阻害剤処理の有無で比較した。その結果、活動が低い条件下では両群で差はみられなかったが、活動が高い条件下では、処理群の方がsPSC発生頻度が有意に低いという結果が得られた。よって、CB1受容体が働かない条件下では、活動依存的に2-AGが放出されると、活動性がさらに高まることが確かめられた。 (2)sPSCの発生頻度を種々条件下で測定し、CB1受容体阻害剤処理の有無で比較した。その結果、活動が低い場合も高い場合も、処理群の方がsPSC発生頻度が著しく低いという結果が得られた。よって、内在性の内因性カンナビノイドによるCB1受容体の活性化は、シナプス活動の維持に寄与している可能性が考えられた。 (3)実験2で得られた「CB1受容体の活性化によるシナプス活動の維持」に関与する内因性カンナビノイドが2-AGなのかアナンダミドなのかを明らかにするために、CB1受容体阻害剤の代わりに2AG合成酵素阻害剤を用いて同様の結果が得られるのかどうか調べた。その結果、同様の作用はないことが判明した。よって、「CB1受容体の活性化によるシナプス活動の維持」に関与する内因性カンナビノイドはアナンダミドである可能性が高いと考えられた。 以上より、内因性カンナビノイドによるシナプス活動調節作用には、アナンダミドによるCB1受容体を介する作用と、2AGあるいはその代謝産物によるCB1受容体を介さない作用とがあると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「平成27年度の研究実施計画」に記載されている実験2つの内の1つはすでに平成26年度に前倒しで行っている。よって残り1つを行い、「細胞自身が生成・放出する2-AGの興奮上昇作用」を確認した。しかし、その作用は小さかったため、そのメカニズムを解明する実験には進まずに、代わりに、細胞自身が生成・放出する内因性カンナビノイドのCB1受容体を介する作用について調べた。その結果、驚いたことには、「CB1受容体の活性化によるシナプス活動の維持」にアナンダミドが関与している可能性を示す予想外の結果を得た。 以上より、ある部分に関しては「3.やや遅れている」ものの、「1.当初の研究以上に進展している」部分もあり、総合評価として、「2.おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果より、従来より知られている「2-AGによるCB1受容体を介するシナプス活動抑制作用」の他に、「2-AG あるいはその分解産物のアラキドン酸等によるCB1受容体を介さないシナプス活動上昇作用」と「アナンダミドによるCB1受容体を介するシナプス活動上昇作用」の二つがある可能性が示された。 今後は、そのメカニズムの解明をめざす。特に、2-AGとアナンダミドの作用の違いの原因を調べる。両者は共にCB1受容体を活性化させるため、類似の作用を有すると思われている。しかし、我々の実験は、両者の作用は正反対であることを示し、意外な結果となった。そこで、何故このようなことが可能であるのかを明らかにする。1つの仮説は、2-AGは完全アゴニストであるため、抑制性シナプスと興奮性シナプスの両方で抑制的に作用しうるが、アナンダミドは部分アゴニストであるため、CB1受容体の密度の低い興奮性シナプスでは作用が弱く、抑制性シナプス伝達のみが抑制され、全体として興奮性に傾くことが考えられる。そこで、この作業仮説を検証する。
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