分泌性因子Fgf8は、大脳皮質領域を前方化するオーガナイザー分子であることが明らかにされている。本研究では、大脳皮質の中でも特に前頭葉の領域化におけるFgf8の役割を明らかにした。胎生期のマウス終脳前端部においてFgf8を電気穿孔法により過剰発現させると、前頭葉の背内側領域(前帯状皮質および前辺縁皮質)が拡大し、背外側領域が縮小した。前頭葉腹側(下辺縁皮質、眼窩皮質)は欠損した。嗅球が肥大化するとともに、前頭葉と嗅球の組織は連続し、それらの境界は不明瞭となった。Fgf8は前頭葉背側を内側化していると考えられるとともに、嗅球の発生においても重要な役割を担っていることが示唆された。
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