本研究では、ピロリ菌除菌後における胃がんの発生機序解明を目的として、スナネズミを用いた解析を実施した。胃腫瘍の発生率は早期除菌群0%、後期除菌群14%、非除菌群71%と、除菌時期が早いほど抑制効果が高かった。一方、慢性胃炎の程度は除菌によって著しく減退するものの、単核細胞浸潤などの所見は、除菌後にも長期間残存することが明らかとなった。胃粘膜での各種炎症関連因子のmRNA発現は、Il-1β・Tnf-αは除菌後速やかに低下するのに対し、Il-6・Ifn-γの低下は緩やかであった。以上より、特定の炎症性サイトカイン発現を伴う慢性胃炎は除菌後にも長期間持続し、胃発がんに関与している可能性が示唆された。
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