研究課題
近年の免疫チェックポイント阻害薬の登場により、癌に対する免疫応答の存在が臨床的に実証されるとともに、癌治療研究の分野において大きな進展をもたらしている。しかしながら、前臨床におけるマウスを用いた研究段階にあっては、ヒト癌細胞とヒト免疫細胞の両方を移植し維持可能なマウスモデルが存在しなかったために、実験的に腫瘍免疫関連薬剤の効果を検討することは不可能であった。本研究では実験動物中央研究所において新たに開発された免疫不全マウス、主要組織適合遺伝子(MHC)ノックアウトNOGマウスを用い、放射線照射を併用することにより、ヒト白血球型抗原(HLA-A)の一致した癌患者由来の末梢血単核球細胞とヒト腫瘍細胞の同時移植モデルを作製することに成功した。又、このモデルを用いることにより、免疫チェックポイント阻害剤のリンパ腫細胞(SCC-3株)、グリオーマ腫瘍細胞(U87株)に対する効果をマウスのインビボ実験において評価することが可能であった。腫瘍における遺伝子変異の蓄積量が多いほど、免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いという研究結果が2014年以降報告されており、癌に生成された遺伝子変異産物(癌変異抗原)が腫瘍に対する免疫応答の主な標的ではないかと考えられている。現在静岡がんセンターで行われている全癌患者を対象とした癌組織の全エキソーム遺伝子変異解析及び遺伝子発現解析のデータを基礎として、日本人に最も多いHLA-A24型に適合しヒト免疫系により認識可能な変異アミノ酸配列候補を解析サーバNetMHC4.0等を用いて絞り込み、患者末梢血細胞から誘導した活性化型樹上細胞を抗原提示細胞として用い、インビトロでの自家免疫応答の再現、検出を現在試みている。新たに開発したマウスモデルを用いてインビボでの癌変異抗原ペプチドワクチンの免疫療法シミュレーションを行い、次世代の個別化がんワクチン療法の開発に向けて研究を進める予定でいる。
すべて 2017
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Clinical Cancer Research
巻: 23(1) ページ: 149-158
10.1158/1078-0432.CCR-16-0122