研究課題/領域番号 |
26440036
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
中村 由和 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (60366416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PLC / 皮膚炎 / 表皮角化細胞 |
研究実績の概要 |
皮膚疾患とリン脂質動態の関連を解明するために、ヒト三次元培養皮膚疾患モデルや皮膚疾患モデルマウスを作製し、皮膚疾患発症時のリン脂質やその代謝産物の変化を明らかにすることを目的として研究を行った。当該年度の計画としてマウス皮膚疾患モデルを作製し、病態発現によりイノシトールリン脂質が変化するかを検討することを予定していた。解析の結果、イミキモドによりマウスに乾癬様皮膚炎を誘導した際の表皮角化細胞でPI (3, 4, 5)P3下流シグナルが活性化されること、また肥満時に見られる乾癬の悪化にはPI (3, 4, 5)P3下流シグナルの過剰活性化が関与する可能性が示唆された。また、当該年度の計画としてGFP融合各種イノシトールリン脂質結合ドメイン(脂質可視化プローブ)を導入した細胞を用いて作製したヒト三次元培養表皮モデルにサイトカイン処理等により皮膚疾患様状態を誘導し、脂質の局在がどのように変化するかを検討することも予定していたため、ヒト表皮角化細胞株HaCaT細胞を用いた3次元培養表皮モデルにて各種イノシトールリン脂質結合ドメインを用いて脂質の局在や量の解析を試みた。PI(4, 5)P2結合ドメインを用いた可視化の結果、シグナルが細胞膜に一様に検出された。またPI(3, 4, 5)P3結合ドメインを用いた際も細胞膜にシグナルが検出されたが、3次元培養表皮下層に比べ上層のより分化が進んだ細胞で強いシグナルが見られた。以上のように当該年度の研究により3次元培養表皮モデル中にてPI (4, 5)P2やPI (3, 4, 5)P3の可視化が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究では、マウス皮膚疾患モデルのうち乾癬モデルにおいて表皮角化細胞でPI (3, 4, 5)P3下流シグナルが活性化していることを見出した。また、脂質可視化プローブを用いてヒト三次元培養皮膚モデル中でPI(4, 5)P2やPI (3, 4, 5)P3といったイノシトールリン脂質を可視化することにも成功した。ヒト三次元培養皮膚モデルを用いて炎症性サイトカイン処理等により皮膚疾患モデルを作製しイノシトールリン脂質の可視化を行う事や、マウス皮膚疾患モデルのうちアトピー性皮膚炎モデルにおけるイノシトールリン脂質の解析が終了していないものの、肥満による乾癬様皮膚炎悪化にPI (3, 4, 5)P3下流シグナルの過剰活性化が関与することを見出し、論文発表を行う事ができたことなどを総合的に考えるとおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト三次元培養皮膚モデルを用いて炎症性サイトカイン処理等により皮膚疾患モデルを作製し、PI(4, 5)P2やPI (3, 4, 5)P3の可視化を行い、これらのイノシトールリン脂質にどのような変化が見られるかを調べる。また、マウス皮膚疾患モデルにおいてはPI(3, 4, 5)P3下流シグナルの活性化がみられているため、この変化をもたらすイノシトールリン脂質代謝酵素の探索、特定を行う。また特定された代謝酵素に対するsiRNAの導入や活性化剤、阻害剤によりイノシトールリン脂質動態の正常化を試み、病態との関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト三次元培養モデルへの脂質可視化プローブ導入条件の決定に時間を要し、ヒト三次元培養モデルへのサイトカイン処理による皮膚疾患様状態誘導実験の一部を次年度に行うことにしたため。また、実験動物飼育スペースや交配スケジュールの問題により実験動物を用いた実験計画の一部を次年度に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の次年度計画に加え、前年度計画のうち「ヒト三次元培養モデルへ炎症性サイトカイン処理による皮膚疾患様状態を誘導しイノシトールリン脂質を可視化する」という計画および「マウスにアトピー性皮膚炎様炎症を誘導し、脂質解析をする」という計画の一部を追加して行うために使用する。
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